初対面で名前を伝えたとき、「えっと、なんて読むんですか?」と聞き返された経験はないでしょうか。病院の受付、宅配便の伝票、保険の書類。
名前は一日に何度も他人の前に差し出すものだけに、そこで一拍おかれるかどうかは、地味に効いてくるのかもしれません。
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その”読み方”が、いま公的に記録されるようになりました。2025年5月26日に改正戸籍法が施行され、戸籍に氏名のフリガナが記載されることに。届出の受付は2026年5月25日で終了しています。あわせて、これから生まれる子どもの名前の読み方には「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」というルールが設けられました。法務省が認められない例として挙げているのは、「太郎」を“ジョージ”、「高」を“ヒクシ”など。つまり、名付けの自由には一応の線が引かれた、ということになります。

今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、いわゆる“キラキラネーム”に人生を少しずつ削られてきた人たちの話。名前を言うと失笑される35歳の女性、そして息子に付けた名前を後悔している母親。当事者の声は、想像よりもずっと切実で、ときに笑い混じりのものでした。

記事の後半では、「そんなに嫌なら変えればいいのでは?」という素朴な疑問についても触れていきます。実は、名前を変えるハードルは思っているより高く、しかも意外なところで引っかかるようです。


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「ゴリゴリにキラキラネームなので親を恨んでいます」


「名前を言うと失笑される」“キラキラネーム”35歳女性の胸中。彼氏の親からも「親はヤバい人?」と不安に思われて…/簡単に改名できるのか?家庭裁判所が認めない理由も
※写真はイメージです。以下同
今年35歳になるAさんは、「ゴリゴリにキラキラネームなので親を恨んでいます」と話す。彼女の名前は、1度見たら絶対に忘れなさそうな漢字のチョイスで確かにキラキラネームだ。

「私ってバレてしまうから、あんまりヒントも出せませんが、名前を言うと失笑されますね……」

大人になった今も名前に苦しむことがあるそうだ。

「小さな時から名前を言うと『あぁ……』みたいな顔をされて、祖父や祖母も『なんでこんな名前にしたんだろうねぇ』と言っていたのを幼心に覚えています」

Aさんの名前は海外の子供の名前で、漢字は完全に当て字。「画数も何も見てくれていないのがまた頭にきます」と語気を強める。

「なんでこの名前なのかというと、母が『外人みたいな可愛い女の子になって欲しかった』そうなんですが、私めちゃくちゃ日本人顔なんですよ(苦笑)。

だから、小さい時とか名前をいうと『え? ハーフ……?』ってよく聞かれて。でも顔を見たらどう考えても日本人にしか見えなくて、漢字を見たら『あぁ(察し)』みたいな表情をされることが多くて。“私って変な名前なんだな” って、ずっと思っていました」

何回か名前を変えることも考えたが、母親だけでなく父親にも止められて断念したんだとか。

「母は『やっぱり思い入れがあるから変えて欲しくない』というし、父は『お前が気にするほど変じゃないよ』というけれど。

もしもキャラクターの名前だったりしたら変えたかもしれないけど、そういうわけでもないしなぁ……と考えているうちに35歳になってしまいました。諦めたというのと、若干、時間が解決したっていうのもありますが、正直、名前に関しては恨んでいますね」

婚約者の親が名前で不安に…


社会人になって苗字で呼ばれることが増え、友人にも苗字で呼んでもらうようにしてストレスは軽減されていったというが、最近ちょっとしたトラブルもあったようだ。

Aさんは結婚が決まったが、彼氏の親からは“子供にキラキラネームをつけるなんて、Aさんの親はヤバい人なのかも?”と不安に思われていたそうだ。

両家顔合わせで“普通の人”ということがわかって、彼氏の親はとても安心していたとか……。
Aさんは結婚してから生まれてくる子供には「絶対にキラキラネームだけは付けません」と話していた。

ホストの源氏名のような名前


「名前を言うと失笑される」“キラキラネーム”35歳女性の胸中。彼氏の親からも「親はヤバい人?」と不安に思われて…/簡単に改名できるのか?家庭裁判所が認めない理由も
新生児とお母さん
都内在住の三船沙耶香さん(43歳・仮名)は、自分の子供にキラキラネームを付けてしまって後悔している張本人だ。

「生まれた時のあまりの可愛さに……第一子だったし、テンションが上がってしまって、旦那とも相談のうえ、すんごいキラキラネームを付けてしまったんですよ……」

三船さんの子供は男の子。こちらも「バレたら嫌なので、本名は出さないでほしい」とのことだが、ヒントをいただくと“ホスト”っぽい名前だという。

「全然そういう意図ではありませんでしたが、生まれた時に結構シュッとしていて『イケメンになりそうー!』って感じだったので、カッコいい名前というか、今時のホストの源氏名みたいにしてしまったんです」

現在、子供は小学校5年生。写真を見せてもらったが、とても可愛い野球少年だった。

「可愛いことは可愛いんだけど、真っ黒で丸坊主(苦笑)。名前がTHE・イケメンだから、ギャップが……。本人はすごく明るいので『俺、見た目と名前があってないよね? 変えてくんない?』と笑いながら言ってきます。気にしてないからよかったものの、もっと普通の名前にしておけばよかったな……と、私も旦那も後悔しています」

息子の名前を「キラキラネーム」と言われて困惑


筆者(吉沢さりぃ)にも、2歳の息子がいるが、息子の名前も「結構キラキラだね」と言われることが多い。

息子の名前は読み方は普通だが、漢字がやや当て字なので「そう読むんだ!」と驚かれるのだ。名前自体はよくある名前だから、まさか自分の子供の名前がキラキラと言われるなんて予想外だった。

名前でいじられることはないだろうけど、成長して「読めねぇよ!」とか言われたら申し訳ない……と思いつつ、画数にはかなりこだわっていて、これ以上ないくらいの大吉なので、たぶん問題ないと信じている。

そんな自分の体験からも、意外と自分の子供の名前がキラキラだと気がついていない親は多いのかもしれない。


<取材・文/吉沢さりぃ>

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■「名前、変えてくんない?」は叶うのか

Aさんは何度か改名を考え、三船さんの息子さんは笑いながら「変えてくんない?」と言う。では実際、戸籍の名前は変えられるのでしょうか。答えは「変えられるが、簡単ではない」。裁判所によると、名を変更するには家庭裁判所の許可が必要で、認められるのは「正当な事由」がある場合だけ。正当な事由とは、名前を変えないとその人の社会生活に支障を来すことをいい、単なる個人的趣味や感情、信仰上の希望だけでは足りないとされています。「名前を言うと失笑される」は、本人にとっては切実でも、法律上は一段高い壁の手前にあるということかもしれません。

意外なのは、認められにくい理由の代表格です。名古屋家庭裁判所の説明資料には「一般的には、姓名判断を理由とするものは、認められていません」とはっきり書かれています。画数にこだわり抜いた吉沢さりぃさんには、なんとも複雑な気持ちになる一文。名付けの現場で最重要視される画数は、改名の現場ではほぼ効力を持たないようです。

一方で、申立て自体は15歳以上なら本人ができます。三船さんの息子さんは現在小学5年生。
あと4~5年もすれば、親を通さずに自分で家庭裁判所に持ち込める立場になるわけです。Aさんも、両親に止められたとはいえ、法的には自分の意思だけで申し立てられました。それでも踏み切れなかったのは、手続きの問題というより「親が付けた名前を、自分の手で消しに行く」ことの重さだったのではないでしょうか。最高裁判所の司法統計年報(令和6年)によれば、令和6年の名の変更許可申立ては5,168件。ちなみに氏(名字)のほうは1万1,534件と、じつは名字の変更申立てのほうが2倍以上多いというデータもあります。

これから生まれる子どもについては、冒頭で触れたフリガナのルールが適用されます。ただ、法務省が挙げるNG例はかなり極端なものばかりで、世間で「キラキラ」と呼ばれる名前の多くは、おそらくそのまま通ってしまう。制度が引ける線は、思ったより手前にあるようです。

名前をつけるのは一瞬ですが、名乗り続けるのは一生。その重さを引き受けるのは、名付けた側ではなく、呼ばれる側です。もっとも、名前が人生のすべてを決めるわけではありません。その名前を“アリ”にしていくのは、当の本人の生き方次第なのかもしれません。


「名前を言うと失笑される」“キラキラネーム”35歳女性の胸中。彼氏の親からも「親はヤバい人?」と不安に思われて…/簡単に改名できるのか?家庭裁判所が認めない理由も
※この画像は生成AIによるイメージです
<再構成/日刊SPA!編集部>

【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720
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