人気沸騰中の「M!LK」。その存在を知らない人は、もういないのではないか。
2014年に結成された5人組の男性ダンスボーカルグループだ。
 もっとも、M!LKが男性アーティスト集団「EBiDAN(恵比寿学園男子部)」の一員であることを知らない人もいるはずだ。EBiDANには現在、10組68人が所属している。平均年齢は23歳。女子中高生ら若い女性にとっては、当たり前の存在になっている。

「熱狂」から「癒やし」へ。M!LKらEBiDANが大旋風を起...の画像はこちら >>

M!LKだけじゃないEBiDAN旋風

 EBiDANは誕生15周年。それを記念し、8月11日にリリースしたシングル「Yes! 東京」は、8月18日付のオリコン週間シングルランキングで初登場1位を獲得した。初週の売上は105.3万枚で、ミリオンを達成。今年度のシングルとして最高の売り上げとなった。M!LKもEBiDANも人気なのである。

 今回は8月13日から16日まで国立代々木競技場第一体育館(東京)で行われたEBiDANのライブ「EBiDAN THE LIVE(エビライ)」の模様を伝えながら、M!LKとEBiDANについて解説したい。

 まずM!LKの基礎知識のおさらいから。昨年の大みそかにNHK「紅白歌合戦」に初出場し、自己肯定感をテーマにしたポップソング「イイじゃん」(2025年)を歌った。


 この曲は音楽配信サービスでの累計再生回数が1億回を突破。あまりに大きな数字でピンとこないが、記録的なヒットである。通常は1000万回前後でもヒット曲として扱われる。

 今年2月発売の8枚目のシングル「爆裂愛してる/好きすぎて滅!」は両A面。こちらも2曲ともポップソングだ。オリコン上半期の合算シングルランキング(CD売り上げやデジタル、ストリーミングを合計したランキング)で1位になった。音楽配信サービスでの累計再生回数は2曲とも1億回を超えた。飛ぶ鳥を落とす勢いなのだ。紅白への連続出場も確実だろう。

 結成は意外と古く、2014年11月。グループ名の由来は「M!LK(ミルク)のように何色にも染まることのできる存在」だ。このため、歌う作品もポップソングばかりではなく、ダンス系ナンバーやラブソング、ファンキーな楽曲など幅広い。


個性派5人が生む「身近な推し」

 メンバーは、まず俳優としても第一線で活躍する佐野勇斗(28)。一見、近づきがたいような美形だが、素顔はひょうきんで親しみやすい。現在はTBS「君の好きは無敵」(火曜午後10時)にキャラクターデザイナー役で準主演している。これまでに5つのドラマで主演を務めた。

 塩﨑太智(25)は明るく、おちゃめな弟的キャラ。ドラマ、バラエティーでも活躍中だ。7月には初のソロ曲「しおざきわんだーらんど」を配信リリースした。摩訶不思議な世界観のポップソングで、♪ぴぴぴぴぴ ぴぽぱぴ――という謎のフレーズが繰り返される。中毒性のある曲だ。

 曽野舜太(24)もドラマ、バラエティーに登場している。昨年5月、連続ドラマ「低体温男子になつかれました」(TOKYO MX)で初主演を果たした。学習院大を卒業している。性格は明朗で温厚。
場を和ませる存在である。

 山中柔太朗(24)は栃木県足利市のサッカー少年だったが、スパイクを買うために上京した中3のとき、スカウトされた。やはり美形。女性ファッション誌「ViVi」(講談社)が選んだ2026年上半期の「ViVi国宝級イケメンランキング NOW部門」で1位になった。小顔で端正な顔立ちだ。ドラマ、映画でも活躍する。

 最後に吉田仁人(26)。リーダーだ。真面目でしっかり者。鹿児島県霧島市出身で、4歳からダンスを習い始め、同県のダンスコンテストで総合優勝を果たしたこともある。今もダンスパフォーマンスでグループを牽引する。やはりドラマやバラエティーにも登場している。


 5人に共通する特徴は身近さ。かつての男性アイドルは遠い存在だった。テレビや雑誌を通し、その芸能活動や存在を眺めるという感覚が強く、男性アイドル側も素顔をなかなか見せようとしなかった。SNS時代になっても、ファンとの距離を縮めることには慎重だった。

 M!LKは違う。アイドル(偶像)ではなく、アーティスト(表現者)であることを前面に押し出している。歌とダンスの頂点を目指している一方で、生身の男性というイメージが強い。この辺も人気の一因だろう。

 SNSも積極的に活用する。X、Instagram、TikTok、YouTubeでメンバーの言葉や日常を頻繁に伝えている。SNSを使ったファン参加型の企画も行う。女子中高生の感覚で評すると、5人は「遠い憧れの存在」ではなく、「身近な推し」なのだ。


 M!LKが所属する男性アーティストの集合体がEBiDANである。誕生から15周年になる。同じ芸能事務所(スターダストプロモーション)に所属する男性アーティストたちが、「恵比寿学園男子部」という架空の学園に集まったという設定が出発点だった。その後、メンバーが増え、グループが結成され、現在のEBiDANへと発展した。

 俳優として大成した北村匠海(28)も元はEBiDANに所属していた。北村は2011年に結成されたダンスロックグループ「DISH//」のリーダーでボーカリスト。北村を含め、グループは2022年にEBiDANを卒業したが、今でもOB意識が強い。

10組68人、推しが見つかる理由

 現在のEBiDANは10組。次の通りだ。

■M!LK 2014年結成、5人組
■超特急 2011年結成、9人組。歌とダンスを融合させたエンターテインメント集団
■SUPER★DRAGON 2015年結成、9人組。略称・スパドラ。スタイリッシュなダンス&ボーカル集団
■Sakurashimeji 2014年結成、2人組。
ギターデュオ。自分たちで作詞・作曲も行う
■ONE N’ ONLY 2018年結成、5人組。ダンス、ボーカルに加え、ラテンやブラジル音楽の要素も取り入れている
■原因は自分にある。 2018年結成、7人組。略称・げんじぶ。作品の歌詞は哲学的、文学的なものが多い
■BUDDiiS 2020年結成、9人組。J-POP、ポップスを基調にしながら、R&B、ヒップホップ、ファンクなども取り入れている
■ICEx 2023年結成、8人組。王道アイドルポップ。「キュート」「爽やか」「キャッチー」という方向性が強い
■Lienel 2023年結成、6人組。青春・恋愛ポップスを得意とする。ダンスも売り物
■iiONDO 2026年結成、8人組。EBiDANの発足15周年を記念して行われたオーディションでメンバーが選ばれた。8人は2008~11年生まれと若い。

 M!LKと同じく、どのグループもアイドル色は薄い。それぞれが個性ある男性アーティストになることを目指している。

 また、これまでのアイドルは所属芸能事務所のトップの好みが色濃く反映されたが、EBiDANのメンバーは複数の人間がスカウトしたり、オーディションで選ばれたりしているので、バラエティーに富んでいる。このため、ファンの側からは自分好みの推しが見つけやすい。

 8月13日から4日間にわたって開催されたEBiDANのライブ「エビライ」は計5万人を動員した。開催中、会場となった国立代々木競技場第一体育館の周辺は女子中高生たちで埋め尽くされた。

熱狂より癒やし、令和のエビライ

 昭和世代の記者はかなり恥ずかしかったが、10代の女性たちが目を輝かせているのを見て、こちらまで胸が弾んだ。若い人にとって恵まれている時代とは思えないから、楽しそうにしている若者を見ると、理屈抜きにうれしくなる。

 オープニングは全員で「恋のDing Dong」を歌った。アップテンポの明るいポップスだ。いきなり会場は最高潮である。日常が吹き飛んだ。ただし、過去のアイドルのコンサートと違い、泣いたりしている観客はいない。楽しそうに歌とダンスを見つめている。

 2曲目は最新曲の「Yes! 東京」を、やはり全員で歌った。ここでも大きな嬌声を上げるような観客はいない。とにかく楽しそうなのだ。男性若手歌手もスタイルが変わったが、観客側も変貌を遂げた。この曲は大ヒット中なので、紅白にM!LKとは別枠でEBiDANも出場する可能性がある。

 会場でM!LKの佐野は「みんな、癒やされて」と呼び掛けた。かつてのアイドルのコンサートは癒やしの場ではなかった。熱狂する空間だった。観客は推しの活躍を間近に見ることで癒やされるのだろう。

 仲が良いのもEBiDANの特徴だ。張り合ったり、過度に自己主張したりせず、どのグループも一緒にショータイムなどに興じた。もう同じグループ内、ユニット内で仲間同士が競うのも時代遅れなのかもしれない。みんなで一緒に成長しようということなのだろう。

 3時間、36曲を聴き終えた観客は満足そうに家路についた。デトックス(解毒)を終えたかのようだった。若者が推しを求める気持ちが、なんとなく分かった。<文/高堀冬彦>

【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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