クールジャパン機構は’13年11月に発足したが、一向に成果を上げられず、損益見通しは繰り返し下方修正され、今回、廃止の方針が打ち出された、だが、高市政権の骨太方針では’33年までに日本のコンテンツの海外売上高を3倍強の20兆円にする目標が掲げられ、官民合わせて33兆円以上を投資する計画だ。
ジャーナリストの石戸諭氏は、クールジャパン機構の失敗から問うべきなのは、政府が成長分野を選ぶことの難しさと、巨額投資を適切に見直す仕組みだとみる(以下、石戸氏の寄稿)。


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クールジャパンの失敗、それでも「国が一歩前に出る」のか

経産省が鳴り物入りで始めた官民ファンド「クールジャパン機構」が累積赤字540億円を抱え、廃止されることが決まった。税金のムダ遣いというもっともな批判が出ているので、ここでは深掘りはしない。高市政権、与野党ともにこの失敗から何を導けるかが日本経済のカギを握る。

食料品消費税1%への減税が秋の臨時国会の大きな争点だと言われている。本当にそうだろうか。消費税減税は多くの党が2月の衆院選の公約に掲げた。議論のプロセスなどに不満があるのは理解できるが、公約は公約だ。財源論も税収が大幅に増加し、財政が健全化に向かっている以上、大きな問題は生じないだろう。

むしろ、劇的な変化は高市政権の「骨太の方針」に示されている。元ネタはアメリカ民主党政権の経済政策だ。高市首相が繰り返す「国が一歩前に出る」は比喩ではない。すでに先行投資の対象を戦略17分野として公表している。重要な論点は何のための産業政策なのか、である。


クールジャパン機構を見ればわかるように、政府、官僚が成長分野を適切に見極めることはできない。だが、日本が失ったら困る分野・産業ならまだわかる。官民挙げてAI・半導体分野で100兆円超、デジタル・サイバーセキュリティへの55兆円超の投資は比較的理解されやすいものだろう。しかし、この中にコンテンツ向け33兆円超の投資方針が交ざっている。対象となるゲーム、アニメ、漫画、音楽などに多額の投資が必要な理由はよくわからない。むしろ「国が一歩引いて」エンタメ市場の効率性に委ねたほうがうまくいくはずだ。

33兆円のコンテンツ投資 問われる“失敗を切る力”

産業政策には失敗がつきものである以上、今後、カギを握るのは芽が出そうな分野に適切に投資を振り分けること、そして失敗を早めに見極めて、切り上げることができるかだ。

高市首相がモデルとする安倍晋三政権は支持率が低下しても持ち直す珍しい内閣だった。人々の雇用を支えたアベノミクスが支持されていたからそれが可能になった。

対して、投資を軸とするサナエノミクスはパッとわかりにくいせいか、支持率上昇には繋がりにくそうだ。国会で議論を交わし、積極的な発信姿勢で臨まない限り、政策のメリットも広がらないだろう。

野党が論戦を挑むポイントは投資政策のガバナンスが機能しているかだ。
失敗探しよりも政権の方針を巧みに引き出し、長期的にチェックを機能させていくことができるか。その姿勢が、消費減税以上に日本経済にとって意味を持つ。

クールジャパン機構が赤字540億円で廃止へ。それでもコンテンツに「33兆円投資」する高市政権への疑問<石戸諭>
石戸諭
<文/石戸諭>

【石戸 諭】
ノンフィクションライター。’84年生まれ。大学卒業後、毎日新聞社に入社。その後、BuzzFeed Japanに移籍し、’18年にフリーに。’20年に編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞、’21年にPEPジャーナリズム大賞を受賞。近著に『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)
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