’26年も止まらない物価上昇。もはや生活するのが精いっぱいと感じる日々だが、街にはなぜか「安すぎて怖い!」と思ってしまう店が存在する。
怖安のカラクリに迫った!

「10分100円」激安レンタカーの裏側

「車の維持費、40年で倍増」。これは共同通信の家計データ分析が昨年明らかにした数字だ。ガソリン代も上がり、収入の伸びをはるかに上回るペースで維持費はかさむ……。そんな時代に、格安レンタカーを選ぶ人も増えている。

 そのなかでも破格の値段で車を借りられるサービスがある。それが、’10年に誕生し、現在は全国280店舗展開している「100円レンタカー」だ。ホームページを見ると、料金表には10分100円からと書かれている。あまりの安さに、出てくるのはオンボロの車か……? そんな想像をしながら、実際にお店に借りに行ってみた。

「10分100円」なのに“激安レンタカー”が儲かるワケ。オン...の画像はこちら >>
 訪れたのは、100円レンタカー墨田両国店。ここはレンタカー業以外にも整備工場と中古車販売を兼ねているようだ。さっそく100円で借りられる車種を見せてもらうと、軽自動車からコンパクトカーまで選べて、思っていたよりもキレイだ。さらに少し値段を上げればプリウスが10分200円で借りられる選択肢もある。

 今回、記者がレンタルしたのはホンダ「フィット」。
’17年ものだが走行距離は10万㎞で、カーナビが標準装備なのもうれしい。外装はしっかり整備され内装も清潔感があり、大手レンタカーと遜色ない乗り心地だった。もちろん免責保証(1000円~)などは別料金だったが、それでも安い。オーナーに話を聞くと、「金額だけだとひどい車が出てくると思われるけど、ウチは下取りして自社でマメに整備・点検してるから状態はいいんだよ」と語る。

 とはいえ、こんなにも激安で提供している会社は大丈夫なのか……? 気になる疑問を運営元のカーベルに尋ねた。「ウチはそもそもレンタカーで儲ける仕組みではない」と話すのは、取締役の堤明彦氏だ。

「10分100円」なのに“激安レンタカー”が儲かるワケ。オンボロ車かと思いきや…運営元が明かす“安さのカラクリ”
カーベル取締役の堤明彦氏。代表取締役・伊藤一正氏のもと、営業・採用など幅広い領域を担う。同社は「明るいブラック企業」を自称し、創業以来20期連続黒字、年商92億円を達成。伊藤氏は著書『悩んだら、「好きか大好きか」で動け!』(ワニブックス)も上梓している
「通常のレンタカー業はとにかく貸して回転を上げることで儲けていますが、ウチは全車が売り物のレンタカーで販売するのがメインなんです。販売する中古車をレンタカー登録して貸し出し、売れるまでの間にも収益を生ませる仕組みになっています。加盟店の約75%が認証整備工場で、売れ残っている在庫車や代車をレンタカーとして登録すると在庫ではなく、減価償却が可能になる。商品の簿価を下げながらレンタカーとして稼働させて、売却時に利益を大きくする。販売価格も市場相場より2~3割安く設定しているので、年間800台以上も売れてます。購入後は、その加盟店にメンテナンスや車検などで長期的な顧客としても定着しやすいんです」

年商1億円の加盟店も

 ’10年に「100円レンタカー」事業がスタートしてから16年、加盟店は全国280店舗まで拡大。今後も拡大予定だが、その要因はフランチャイズ費用も格安だからだとか。
初期費用は入会金50万円と、スターターキット(のぼり旗、看板、日常点検シート、ステッカーなど)10万円。その後は、月額会費5万5000円のみで、同業種に多い売り上げのロイヤルティや看板の商標使用料など追加課金は一切ない。

「10分100円」なのに“激安レンタカー”が儲かるワケ。オンボロ車かと思いきや…運営元が明かす“安さのカラクリ”
「怖いほど安い店」の裏側
「10分100円」なのに“激安レンタカー”が儲かるワケ。オンボロ車かと思いきや…運営元が明かす“安さのカラクリ”
「外も中も100円とは思えないですね」と漏らすと、「きちんと整備しているのはもちろんのこと、全車、売り物だとお客さんもわかっているからキレイに乗ってくれる人がほとんどだよ」とオーナー
「ですから、加盟店さんは年間5台販売(1台あたり利益約20万~25万円)してもらえれば運営にかかるコストは回収できますし、それ以上は加盟店側の利益になります。とくに地方は駐車場など維持費が抑えられるので、宮城では年商1億円の加盟店さんもありますね。ただ、近年の物価高騰もありますので、『10分100円』の原則は維持しながら、長時間利用帯の料金を中心にトータル約15%値上げしながらバランスを取っています」(堤氏)

「10分100円」なのに“激安レンタカー”が儲かるワケ。オンボロ車かと思いきや…運営元が明かす“安さのカラクリ”
10分200円~レンタル可能なプリウス。全車販売車のため、クラスではなくレンタルする車種を指定できる
 ただ、ガソリン代・駐車場代の上昇といった物価高騰に加え、現場の人手不足やカーシェアの普及など、昨今のレンタカー業界を取り巻く環境は厳しさを増している。そうした逆風のなか、とある関東の加盟店オーナーは思わずこう漏らす。

「ガソリンや駐車場が高くなっているうえに、カーシェアがどんどん拡大してきて客が流れていってるのは感じます。昨年あたりから売り上げが徐々に下がっていって、今年の7月はハイシーズンなのに前年比3割減と苦戦してますね。近年は遠出するような人も減っているし、今年は悪天候の日も多かったからかな。

 正直、100円レンタカーって看板も楽じゃないですよ。本当に10分だけ100円で借りに来たお客さんにも、乗車前の説明から乗車後の清掃まで行わなければいけないですから。そういう時は『カーベルレンタカー』って名前にしてくれないかなって思います(笑)」

「10分100円」なのに“激安レンタカー”が儲かるワケ。オンボロ車かと思いきや…運営元が明かす“安さのカラクリ”
GW(4月25日~5月10日)、夏季(7月18日~8月30日)、冬季のハイシーズン(12月26日~1月4日)は、ハイシーズン料金+1000円発生するが、それ以外は10分100円からレンタルすることができる


今年4月から「100円カーシェア」を立ち上げ

 そんなニーズや環境の変化の波を読んで、カーベルは今年4月から「100円カーシェア」を立ち上げた。
24時間365日、スマホ一つで予約から返却まで完結する無人サービスで、遊休車両を人手なしで稼働させられるため、加盟店からの関心も高く、現在約20店舗への導入が進んでいる。

「10分100円」なのに“激安レンタカー”が儲かるワケ。オンボロ車かと思いきや…運営元が明かす“安さのカラクリ”
100円カーシェアもスタート
 流通ジャーナリストの渡辺広明氏も、「遊休資産活用は100円レンタカーだけの話ではありません。低価格が売りのサービスは遊休資産をうまく使ってマネタイズすることが必要で、そうしたビジネスモデルは増えつつある」と語る。

 100円で車を借りに来た客が、いつの間にか車を買って帰る。レンタカーを「売り場」に、遊休資産を「収益源」に変えるモデルに、低価格を実現するカラクリがあった。

「10分100円」なのに“激安レンタカー”が儲かるワケ。オンボロ車かと思いきや…運営元が明かす“安さのカラクリ”
「レンタカー」以外にも「買取」「販売」「車検」「修理」の文字が並ぶ加盟店の看板。加盟店の約75%が整備工場のため、車両の維持管理を内製化しやすく、外注費を抑えられることも低価格を支える要因の一つだという
100円レンタカーの「激安の裏側」
●レンタカーは「車を売るための入り口」
●売れ残り在庫や代車を有効活用
●レンタカー登録で減価償却
●売却益まで見越したビジネスモデル
●レンタカー利用客が長期顧客になる

【流通ジャーナリスト 渡辺広明氏】
東洋大学法学部経営法学科卒業。流通ジャーナリスト、コンビニ評論家。780品超の商品開発に携わった“売れる理由”の専門家。著書に『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)など

<取材・文/吉岡俊>

―[「怖いほど安い店」の裏側]―
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