9月13日に阪神競馬場で行われたローズSは、1番人気のモンローウォークが快勝した。2番手から抜け出すと2着に3馬身差をつけ、重賞初挑戦ながら無傷の4連勝。
秋華賞へ向けて、一気に主役候補へ名乗りを上げた。
「キムテツはマジで何してくれてんねん」…“有馬記念騒動”から...の画像はこちら >>
 一方、2番人気に支持されたイクシードは3着。一見すれば、人気馬同士の明暗が分かれただけにも見えるが、両馬の過去を振り返ると、この結果には少し皮肉な背景が浮かび上がってくる。

 現在は栗東の上村洋行厩舎に所属するモンローウォーク(馬主・エムズレーシング)だが、デビュー時に在籍していたのは、イクシードと同じ美浦の木村哲也厩舎だった。木村厩舎時代の昨年8月に新馬戦を勝っており、当時から素質の一端を示していた。

有馬記念直前に物議を醸した“不可解な特別登録”

 そして話は約9か月前、昨年12月の有馬記念にさかのぼる。

 覚えているファンも多いだろう。暮れのグランプリ直前に議論を呼んだのが、木村厩舎のヘデントールによる有馬記念への特別登録だった。

 同馬はファン投票10位で優先出走権を持っていたが、所属するキャロットクラブは「基本的には年明けからの始動を予定」と公表していた。それでも有馬記念に登録されたことで、「実際に出走する可能性が低い馬をなぜ登録するのか」と疑問の声が広がったのだ。

 さらにネット上では、同じ木村厩舎のスティンガーグラスを出走させるための登録ではないかとの臆測まで拡散。これに対し、同馬の馬主・エムズレーシングは、ヘデントールの登録を指示・依頼した事実を否定したうえで、スティンガーグラスについて「現時点の管理態勢での出走は難しい」として、出馬投票を見送るという異例の声明を発表した。

『日刊SPA!』でも当時、この一連の騒動を取り上げていた。
そしてその後、スティンガーグラスだけでなく、同じエムズレーシング所有のモンローウォークまでもが木村厩舎を離れ、上村厩舎へ転厩したことが明らかになった。

 ただモンローウォークの転厩理由は公表されておらず、有馬記念を巡る騒動が直接の原因だったと断定することはできない。一方で、声明から転厩までの流れを見れば、両者を結びつけて考えたファンがいたとしても不思議ではないだろう。

デビューから無傷の3連勝で「令和のファインモーション」の声も

 そして上村厩舎へ移ったモンローウォークは、その後に大きく飛躍を遂げる。約10か月ぶりとなった6月の八雲特別では、新馬戦から馬体重を22kg増やして復帰。3番手から抜け出して2馬身差で快勝し、ひと回り成長した姿を見せた。

 さらに7月のかもめ島特別では、初めて経験する重馬場も苦にせず3馬身半差で勝利。デビューから無傷の3連勝を飾った。2002年に無敗で秋華賞を制した名牝ファインモーションと重なる歩みから、ネット上では「令和のファインモーション」と呼ぶ声まで上がった。

 するとSNSには、「モンローウォークが強いのは1年前から知ってるんですよ。キムテツはマジで何してくれてんねん」との声も上がった。

 木村厩舎を離れた素質馬の活躍に、複雑な思いを抱くファンもいたということだ。

古巣の有力馬イクシードと重賞の舞台で迎えた直接対決

 そして、それから2か月後。そんな見方をさらに印象づける舞台が巡ってきた。
ローズSではモンローウォークが1番人気、イクシードは2番人気に支持された。

 だが、レース内容には大きな差がついた。

 モンローウォークは今回も好位から運ぶと直線で一気に抜け出し、2着馬を3馬身突き放す完勝。一方のイクシードも後方から追い込んだが、勝ち馬から0秒7差の3着に敗れた。奇しくも両馬の上がりは同じ34秒1。少なくともこの日の直接対決では、モンローウォークが力の差をはっきり見せつけた。

 昨年末には同じ木村厩舎にいた2頭が、別々の道を歩んだ末に重賞の舞台で再び交差。そして結果を残したのは、そこを離れたモンローウォークの方だった。

9か月前の騒動が生んだ皮肉な結末

 競走馬の成長には、馬自身の成長や調整過程、レース条件など多くの要素が絡む。今回の結果だけで、転厩の是非まで論じることはできない。

 それでも、有馬記念を巡る一件で当時注目されたのはスティンガーグラスだった。その陰で同じ馬主のモンローウォークも厩舎を離れ、今では秋華賞の主役候補にまで成長している。


 有馬記念の騒動から9か月。当時はまだ重賞とは無縁だったモンローウォークが、今や古巣の有力馬を破ってG1の主役候補となった。有馬記念の騒動を知るファンほど、この勝利を単なる重賞初制覇とは違った思いで見ていたかもしれない。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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