後ろの車のライトが、いつもより近い気がする。そう思ったとたん、信号やカーブのたびにバックミラーばかり見てしまう。
車を運転する人なら、一度はそんな落ち着かない時間を過ごしたことがあるのではないでしょうか。
“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」...の画像はこちら >>
政府広報オンラインが紹介している警察庁の「あおり運転に関するアンケート」(2019年)では、回答した運転者2681人のうち35%が、過去1年間にあおり運転の被害にあったと答えています。およそ3人に1人です。

今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ人気記事から、あおり運転にあった女性2人の話。1人は仕事帰りの県道で、もう1人は旅行先の高速道路で、後ろの車にしつこくあおられることになりました。

記事の後半では、あおり運転でどんな被害が多いのか、そして実際にあったときに国がすすめている動き方を調べてみました。

*  *  *

①自宅まで追ってきた“あおり運転”の恐怖


“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」加害者の残念な末路/あおり運転で最も多い被害は何なのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 川島美穂さん(仮名・30代)は、仕事帰りにいつもの県道を走っていた。

「前の車がすごく遅くて、制限速度より10キロ以上も下回っていたんです。がまんしていましたが、直線に入ったタイミングで安全を確認してから追い抜きました」

 その直後、バックミラーには“強烈な光”が映ったという。

「後ろの車が猛スピードで詰めてきて、ハイビームも何度も点滅させてきました。もう怖くて、手のひらが汗でびっしょりになりました」

 住宅街に入り自宅の駐車場に車を止めようとしたときも、その車はまだ側にいたそうだ。

「運転手が“車から降りてきたら言ってやろう”と思いました。でも、相手は通り過ぎて、路地の奥に行ってしまったんです」

加害者は意外な人だった


 次の瞬間だった。

“ガシャーン!”

 大きな音がした。
川島さんが確認すると、その車が隣の家のブロック塀に突っ込んでいたのだ。運転手は、白髪まじりの高齢男性だった。

「穏やかそうな見た目だったので、“まさか”と思いました。幸いケガはなかったようですが、“あれほど執拗にあおってきた結果がこれか”と思うと、少しだけ気持ちが落ち着きました」

“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」加害者の残念な末路/あおり運転で最も多い被害は何なのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 事故は、その後、隣の家との話し合いで解決したそうだ。

「修理費は相手が負担したようですが、あの夜の恐怖は忘れられません」

②高速道路で続く危険な挑発…気持ちが救われた瞬間


“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」加害者の残念な末路/あおり運転で最も多い被害は何なのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 友人と四国旅行へ出かけた小泉安奈さん(仮名・20代)。

「レンタカー会社の人に、『最近、“あおり運転”が多いので気をつけてください』と言われたんですが、そのときは“他人事”でした」

 高速道路を走りはじめてまもなく、助手席の友人が……。

「後ろの車、なんか変じゃない?」

 ミラーを見ると、黒いベンツが近づいてきていた。ベンツは車間を詰めたり離したり、昼間なのにハイビームを点灯させたという。

「怖くて、どこかに逃げたいと思いましたが、最寄りのパーキングまでは60キロほどありました」

“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」加害者の残念な末路/あおり運転で最も多い被害は何なのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 やがてベンツは、小泉さんの車を追い抜いて前に割り込み、急ブレーキを何度も踏んだ。

「警察に連絡するかどうかを話しながら、とにかく事故を起こさないように必死でした」

 そのとき、背後からサイレンの音が鳴り響いた。小泉さんが振り返ると、「黒のベンツ、後ろについてきてください」と警告していたのだ。

 警察はすぐに車を止め、事情聴取をはじめたそうだ。

“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」加害者の残念な末路/あおり運転で最も多い被害は何なのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
「助けてもらえてホッとしました。
偶然にも覆面パトカーが後ろにいたのは、奇跡みたいでした」

 その後、小泉さんたちは無事に旅行を楽しむことができた。

「ドライブレコーダーの映像も渡したんです。あの一件で、“いつでも証拠を残せる準備が大事”だと実感しました」

“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」加害者の残念な末路/あおり運転で最も多い被害は何なのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
<取材・文/chimi86>

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■被害の8割は、後ろからの著しい接近

“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」加害者の残念な末路/あおり運転で最も多い被害は何なのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
リードで紹介した警察庁のアンケートでは、被害にあった939人に、どんなあおり運転を受けたのかも聞いています。いちばん多いのは「後方からの著しい接近」で81.1%。ほかにも「クラクションやハイビーム」が20.4%、「割り込み後の急ブレーキ」が14.9%、「つきまとい」が9.8%と、2人が受けた被害はどれもこの調査の項目に並んでいます。

川島さんが受けたのは、猛スピードで詰めてくる接近と、何度も点滅するハイビーム、そして自宅の近くまでのつきまといです。小泉さんの場合は、車間を詰めたり離したりする接近に、昼間のハイビーム、割り込んでからの急ブレーキが重なっています。2人とも、1種類ではなく、いくつもの被害をまとめて受けていたことになります。

あおられた場所は約77%が一般道路、約23%が高速道路でした。県道と高速道路という2人の話は、ちょうどその両方にあたります。

■国がすすめるのは「車から出ない」

警察庁は、あおり運転を受けたら、サービスエリアやパーキングエリアなど安全な場所に避難し、車の外に出ないまま110番通報するよう呼びかけています。政府広報オンラインでは、同乗者がいれば同乗者が通報すること、ドライブレコーダーで相手の行為を記録しておくことも挙げられています。助手席の友人と通報について相談しながら運転に集中し、あとで映像を警察に渡した小泉さんたちの動きは、この手順とよく重なります。


ただ、小泉さんたちの場合は、逃げ込もうにも最寄りのパーキングまで60キロほどありました。国土交通省は、高速道路の休憩施設どうしが概ね25キロ以上離れている区間を「空白区間」と呼び、2022年の発表時点で全国に約100区間あるとしています。25キロでも「空白」と呼ばれるのですから、60キロ先まで逃げ場がない心細さは相当なものです。

あれほどしつこく後ろをついてきた男性が、なぜ最後は路地の奥でブロック塀に突っ込んだのか。アンケートの数字をいくら眺めても、その理由までは見えてきません。川島さんが「まさか」と思った穏やかそうな見た目と、あの夜の運転との間に何があったのかは、本人にしかわからないことです。

次にバックミラーに強い光が映ったら、自分ならまずどこへ逃げ込むか。帰り道にある駐車場や、よく使う高速道路のパーキングの場所を一度思い浮かべておくだけでも、手のひらの汗は少し減りそうです。

“あおり運転”の車が、家までついてきた。「まさかこの人が…」加害者の残念な末路/あおり運転で最も多い被害は何なのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
<再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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