高速道路や国道を走っていて、後ろの車がやけに近い気がすると、ついミラーをちらちら見てしまう。反対に、前の車がのんびり走っていると、自分も少しイライラしてしまう。
ハンドルを握ると、いつもより気持ちがとがってしまうことは、多くの人に覚えがあると思います。
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法務省の犯罪白書によると、2024年に警察があおり運転(妨害運転罪)として取り締まったのは146件。前の年より44件増えています。

今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ人気記事から、あおり運転に巻き込まれた2人の男性の話。夜の山道と、仕事帰りの国道で、2人がとった行動とは?

記事の後半では、あおり運転の取り締まりの数字と、警察が呼びかけている「あおられたときの対処法」について調べてみました。

*  *  *

①温泉帰りの山道で、背後から迫る異様な車

窓を開けて「勝負しろや!」“あおり運転”してきた大学生が警察に捕まるまで/あおり運転は1年で何件取り締まられているのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 週に1度の温泉通いは、仕事終わりのささやかなご褒美だった。高橋健太さん(仮名・20代)は、いつものように温泉でゆっくりと体を休め、夜の山道を自宅に向かって走っていたという。

「その日は、いいお湯に入って気分もリラックスしてたんです。まさか、あんなことが起きるなんて思いもしませんでした」

 対向車もなく街灯もまばらな一本道。そんな静かな山道で、突然後ろから強烈なハイビームがミラーに映り込んだ。

「一瞬、なにかの間違いかと思いました。でも、その車はどんどん距離を詰めてきました」

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※画像は生成AIによるイメージです
 高橋さんは道を譲ろうとスピードを落としたのだが、その車は追い越すことなく、数メートルの距離にぴったりと張りついたままだった。車体を揺らし、クラクションも鳴らしてきたそうだ。


「すごく不穏な空気を感じました。“なにかおかしい”と直感しましたね」

 しばらく走ったところに、小さな待避所を見つけた高橋さん。ウインカーを出してそこに車を寄せることにした。しかしその瞬間、後ろの車が加速して追いつき、並走してきたという。

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※画像は生成AIによるイメージです
 そして、助手席の男性が窓から身を乗り出して……。

「なに逃げてんだよ、勝負しろや!」

 と怒鳴ってきたのだとか。

「勝負しろや!」の先に待っていた末路

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※画像は生成AIによるイメージです
 車には大学生風の若者4人が乗っており、大音量の音楽を響かせていたという。

「巻き込まれたくなかったので、無視して110番通報しました。すると、彼らがそれに気づいて、今度は私の前に回り込んできたんです」

 相手の車は急ブレーキをかけ、高橋さんの進路をふさいだ。危うくぶつかりそうになりながらも、必死で車を止め、ドアをロックした。

「場所はAです。今、複数人に囲まれています」

 高橋さんは必死に警察へ伝えたそうだ。すると、若者たちは車を降り、高橋さんの車を取り囲んで窓を叩き始めた。


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※画像は生成AIによるイメージです
 しかし、その瞬間、遠くからパトカーのサイレン音が響いた。

「ヤバっ!」

「若者たちが逃げようとするのが見えました。でも、先の交差点で警察官が待ち構えていたみたいで、全員その場で捕まっていました」

 警察官に保護され、ようやく車から降りた高橋さん。安堵と恐怖が入り混じり、大きなため息が出たという。

「怖くなかったといえば嘘になります。冷静に通報できた自分を少しだけ褒めました」

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※画像は生成AIによるイメージです
 後に警察から聞いた話によると、彼らは地元の大学生だった。警察から厳しく叱責されたうえ、保護者にも連絡が入ったようだ。

「週に1回の楽しみは相変わらず続けています。でも今は、安全な道で行ける温泉を選ぶようになりました。命あっての癒やしですからね」

②帰宅中の車に猛スピードで割り込み…

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※画像は生成AIによるイメージです
 会社からの帰宅途中、国道を走っていた佐藤誠さん(仮名・30代)は、後ろから異常なスピードで近づく車に気がついた。

「最初は、ただ急いでいるだけだと思ったんです。でも、明らかに距離が近すぎました」

 ミラー越しに見えたその車は、数メートルも車間を空けず、何度もパッシングを繰り返していた。佐藤さんが少しでも減速すれば、衝突してしまいそうな距離だったという。


「これは“普通じゃない”って直感しました」

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 佐藤さんは走行車線を外れることなく、冷静に運転を続けた。しかし、後ろの車は強引に追い越して前に出ると、いきなり急ブレーキをかけてきたそうだ。

「思わず反射的にブレーキを踏みました。衝突は回避できましたけど、本当に怖かったですね」

 その車はその後も、左右に蛇行を繰り返しながら挑発するように走り、再び割り込んできては急ブレーキをかけるという悪質さだった。

“通りすがりの正義”で終幕

 まるで佐藤さんを引き寄せるかのように、路肩に強引に停車。そして、「お前も止まれ」と言わんばかりに道を塞ぐような位置で待ち構えていた。

「もう完全に絡まれている状態でした。私は車のドアにロックをかけて、窓も開けず、外には出ませんでした。なにをされるかわからないので……」

 やがて車から男性が降りてきて、佐藤さんの車に怒鳴り声を浴びせ、さらには車のボディを叩く行動に出た。

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 しかし、その異様な光景に、後続車も気づき始めたという。クラクションが鳴り、渋滞のように車が止まり出した。すると、1人の男性が車を降り、相手に向かって怒鳴り返したのだ。

「お前なにやってんだよ! 危ねぇだろうが!」

 あおり運転の男性は明らかに動揺し、バツの悪そうな表情で自分の車へ戻ると、なにも言わずにその場を去っていった。


「なにがしたかったのか、最後までわかりませんでした。ただ、あれは完全に1人で勝手に自滅していったという印象でしたね」

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 佐藤さんは念のため、車に搭載していたドライブレコーダーの映像を保存。必要があれば警察に提出できるように備えた。

「普段はまったく意識しないけど、ドライブレコーダーって本当に重要なんだと実感しました。あの冷静さが、自分を守ったと思っています」

<取材・文/chimi86>

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■あおり運転の取り締まりは、1年で146件

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あおり運転は、2020年6月の道路交通法の改正で「妨害運転罪」として罰則ができました。警察庁によると、刑は最大で5年の拘禁刑で、1回で運転免許も取り消されます。

冒頭で紹介した2024年の146件は、この妨害運転罪で取り締まった件数です。いっぽう、車間距離を詰める運転そのものも違反になります。交通安全白書によると、2024年に高速道路で車間距離不保持として取り締まられたのは4713件でした。

■警察が呼びかけるのは「車の外に出ない」

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警察庁は、あおり運転を受けたときは安全な場所に避難し、車の外に出ないで、ためらわずに110番通報するよう呼びかけています。ドライブレコーダーについても、こうした運転を防ぐのに役立つとして、付けることをすすめています。

高橋さんはドアをロックして110番通報し、佐藤さんは車から降りずにドライブレコーダーの映像を保存していました。2人とも、警察が呼びかけている行動を、とっさにとれていたことになります。


また警察庁は、運転するすべての人に「思いやり・ゆずり合い」を呼びかけています。急いでいるときに前の車が遅かったり、強引に割り込まれたりして、つい車間を詰めたくなる。そんな瞬間は、誰にでもあるのかもしれません。

もちろん、146件は警察が妨害運転罪として取り締まった件数です。通報されなかったものや、ほかの違反として扱われたものは入っていません。この数字だけで、あおり運転が実際にどれくらい起きているかを言い切ることはできません。それでも、ハンドルを握っている自分が、ふだんよりせっかちになっていないか。次に車に乗るとき、ミラーに映る後ろの車だけでなく、前の車との距離もちょっとだけ気にしてみると、帰り道がいつもより穏やかになるのかもしれません。

窓を開けて「勝負しろや!」“あおり運転”してきた大学生が警察に捕まるまで/あおり運転は1年で何件取り締まられているのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
<再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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