社長でも党首でもないのに組織も世論も動かす存在。それが“ドン”だ。
彼らはいかにして頂点に君臨するのか。政界から裏社会、カルチャーまであらゆる場所に潜む“ドン”の正体に追るニュースを賑わせる“彼ら”の正体に迫る!

ドンならぬ「政界キングメーカー」

「高市政権は転がり落ちていく」政界のキングメーカー・亀井静香...の画像はこちら >>
「だいたい俺が思う方向に行くんだよ。高市もうまくいっただろ」

こう語るのは、自民党時代には運輸相、建設相(共に現・国交省)、政調会長の要職を務め、民主党政権時代には国民新党代表として連立政権入りを果たして金融担当相を務めた亀井静香氏だ。人呼んで、ドンならぬ「政界キングメーカー」。数々の政局で独自の政治力を発揮してきた永田町の仕掛け人だ。

語り草になっているのは、1993年に初めて自民党が下野した後のこと。“政界の壊し屋”小沢一郎氏の仕掛けで非自民連立の細川護熙政権が誕生すると、亀井氏はすぐさま「殿の首をちょうだいするか」と政界“再”再編に動きだした。

元警察官僚ならではの情報力で細川首相の資金スキャンダルを突き止め、内閣を総辞職に追い込むと、返す刀で宿敵・社会党との連立工作に奔走。自社さ連立の村山富市政権樹立による与党復帰という「ウルトラC」の立役者となった。

「そもそも、俺には右も左もない。魂でやってるからな。警視庁にいた頃、成田空港の建設に反対する三里塚闘争に関わって、向こう側の人たちともよく話した。気持ちはよくわかったよ。
だから、村山さんともわかり合えて、総理を引き受けてくれたんだ」

かつての敵とも気脈を通じる

’00年、小渕恵三総理が脳梗塞で倒れたとき、自民党政調会長だった亀井氏は、密室で後継総理を森喜朗氏に決めた「赤プリ5人組」の一人だった。小泉純一郎首相が郵政民営化を掲げると、反対を表明して離党届を提出。国民新党を結党し、’09年には民社国連立政権の樹立に奔走した。

かつての敵とも気脈を通じる亀井氏は、こうしてキングメーカーと称されるようになったのだ。その背景には、武闘派として鳴らしながらも情に厚い人情家の横顔がある。

’12年に連立を組んでいた野田佳彦政権が消費増税を打ち出すと、国民新党代表の亀井氏は猛反発。一方、党内では幹事長の下地幹郎氏が地元・沖縄の振興予算を確保するため政権残留を求め、亀井氏を代表の座から追い落としたが、「下地は誰よりも沖縄を愛しているから」と理解を示した。

「(クーデターの際には)事務所の連中が『親殺し!』って下地に怒って、『出禁にしてください』と頼んできた。だが、その後の選挙で当選が危なくなった下地が『助けてください』と頼んできたとき、俺はすぐに沖縄に応援に行ったんだよ。うちの秘書はあきれてたけど(笑)、下地は泣いて喜んでたな。俺はわかってたんだ。下地は沖縄を愛しているがゆえに、俺を切らざるを得なかったことを」

人が集まるワケは剛腕の裏に見える人情

「高市政権は転がり落ちていく」政界のキングメーカー・亀井静香が明かす、永田町の裏側と“大連立”の必要性
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’17年に政界引退を決めた亀井氏だが、今でも永田町での影響力は大きい。石破茂元首相をはじめ、有力政治家は定期的に“亀井詣で”を続けている。明治神宮外苑の樹木伐採が問題となっていた’24年、伐採本数の削減が突然決まった背景には、亀井氏の働きかけもあったという。


「森(喜朗元首相)に、言ったんだよ。『お前の名前は何だ? 杜(森)を守らなくてどうする』ってな」

高市早苗首相の誕生は、2年前から“予言”していた。ラジオ番組で共演した高市早苗・経済安保担当相(当時)に、「あんたは初の女性総理になる」と明言していたのだ。ただし、足元の政権運営に危機感を抱いているという。

「総理になるまではうまくいったが、権力を握って周りが見えなくなっている。国旗損壊罪を成立させるなんて、バカなことをしたものだ。国旗が尊重されるのは国民の心があってのもの。国が法で縛るものではない。

この9月の内閣改造・党役員人事にしても、歴代総理がやらなかった参議院の人事にまで手を突っ込んで参院幹事長を更迭させたせいで、不満が溜まっている。高市のこういう姿勢は、今後強まるだろうからお灸を据えなきゃいかんが、何かと理由をつけて逃げ回っている。この先、高市政権は転がり落ちていくだろうな」

「ムチャができる実力者が永田町にいない」

昨年の総裁選を戦ったメンバーで唯一、9月人事で役職を失った林芳正・前総務相が“ポスト高市”と目されているが、亀井氏の評価は厳しい。

「林はいいと思うが、行儀が良すぎる。
行儀のいいヤツは最後(総理)までいけない。外ではトランプや習近平、プーチン……虎や狼みたいな連中が世界を狙っている。日本だけ内輪で消耗し合ってる場合じゃないんだ」

亀井氏は「ムチャができる実力者が永田町にいない」と指摘する。

「自民党は沈む夕日だ。流れを知らないからな。玉木(雄一郎・国民民主党代表)を政権に引っ張り込めりゃいいんだが。それができないなら、玉木が高市を倒すしかない。ただアイツにそんな度胸はないし、頭が良すぎて突き進めない。トランプと渡り合えるかという点も疑問が残る。やれるとしたら小沢一郎くらいだ。ムチャなヤツに対抗できるのはムチャなヤツだけ。

ただ、小沢も今は落選中だ。
あとは俺の秘書だった武田良太がカギを握るだろう。俺に似て行儀が良くないからな。この状況は俺が村山政権をつくったときに似ている。残された道は大連立しかない。共産党も加えればいい。暴力革命をやらないと宣言している共産党はまるで歌を忘れたカナリアだ。怖がる必要はない」

荒唐無稽に思える大連立。そうせざるを得ないところまで、日本の危機は深まっているというのが亀井氏の見立てだろう。表の権力が揺らぐときこそ、陰の力である“ドン”が求められるのだ。

【元運輸相、元建設相、元金融担当相 亀井静香氏】
政治家。自民党政調会長、重要閣僚など要職を歴任。自社さ政権の樹立、森喜朗総理擁立など、多くの政局で影響力を発揮する。
郵政解散後、民主党連立政権で金融担当相として郵政改革法案を主導。石原慎太郎氏の都知事時代には、都政を陰から支援した

※2026年10月21日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[陰の権力者[ドン]大研究]―
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