先週末の中央競馬では、秋華賞でモンローウォークが無傷の5連勝を飾る一方、富士Sでは12番人気のシュガークンが波乱を演出した。
 伏兵シュガークンを勝利に導いたのは、デビュー3年目の吉村誠之助騎手。
これが早くもキャリア4度目の重賞制覇となった。

重賞4勝の吉村騎手、勝利数で上回るも重賞未勝利の高杉騎手

昨年74勝の競馬若手のホープが遅刻で戒告…同日に「重賞4勝目...の画像はこちら >>
 吉村騎手は2024年に33勝、2025年に66勝を挙げ、最初の2年間で99勝をマーク。期待の若手として注目度は高い。

 だが、同期にはそれを上回るペースで勝ち星を積み重ねていた騎手がいる。高杉吏麒騎手だ。

 高杉騎手は2024年のデビューから2年間で122勝を記録。現在も通算勝利数では吉村騎手を上回る。ただし、重賞実績では吉村騎手が先行している。

 今回の富士Sで4勝目を挙げた吉村騎手に対し、高杉騎手はいまだ重賞未勝利。それでも今年6月の宝塚記念ではタガノデュードで5着、ラジオNIKKEI賞ではディールメーカーを2着に導くなど、大舞台でも見せ場をつくっていた。

新幹線への乗り遅れ、スマホ使用で制裁も

 ところが、吉村騎手が富士Sを制した10月17日、高杉騎手の名前も思わぬ形で注目を集めた。新潟競馬場で調整ルームへの入室が遅れ、JRAから戒告を受けたのだ。

 実は、高杉騎手が遅刻によって制裁を受けたのは今回が初めてではない。

 デビュー1年目の2024年7月16日には、盛岡競馬8Rでシデンに騎乗する予定だったが、移動の新幹線に乗り遅れ、前検量の受検時刻に間に合わず騎手変更となった。
この件で岩手県競馬組合から2日間の騎乗停止処分を受け、JRAでも同じ期間の騎乗停止が適用された。

 今回はレースの前検量ではなく、調整ルームへの入室遅れによる戒告。事情は異なるものの、時間を守れなかったという点では共通している。

 さらに今年3月には、阪神競馬場から中山競馬場への移動中、自身のスマートフォンでNetflixやJRA-VANを視聴。通信機器を不適切に使用したとして、開催日2日間の騎乗停止処分も受けた。

月平均65鞍から突然の騎乗ゼロ…4週にわたり実戦を離れた夏

 もっとも、レースでは今年も順調に白星を重ねていた。7月末時点で38勝を挙げ、同期の吉村騎手を12勝上回っていたのだ。

 その状況が一変したのは7月下旬だった。7月19日の小倉12R、筑紫特別。高杉騎手はミッキージャンプを勝利に導き、この日の競馬を締めくくった。

 しかし、翌週から騎乗馬がぱったりと途絶えてしまう。8月6日には藤岡健一厩舎を離れてフリーに転向することがJRAから発表され、その後も騎乗馬ゼロが続いた。

 結局、4週連続で騎乗機会がなく、実戦復帰は8月23日まで待たなければならなかった。


 今年1月から6月までは月平均65鞍に騎乗していた高杉騎手。それが突然、1か月近くもレースから姿を消したのだから、驚いたファンも多かっただろう。

復帰戦で8番人気ながら4着も…騎乗数は戻らず

 騎乗数の激減とフリー転向をめぐり、SNS上ではさまざまな憶測も広がった。ただ、JRAの発表では所属変更の理由に触れられていない。

 約1か月ぶりの実戦となった8月23日の中京6R、有松特別では、前川恭子厩舎のミッキースターダムに騎乗。8番人気ながら果敢に逃げ、勝ち馬から0秒2差の4着に入った。

 復帰戦で管理馬を託した前川調教師も、高杉騎手の腕を高く評価。調教での騎乗ぶりに感心を示し、今後の活躍にエールを送っている。

 しかし、騎乗機会がすぐに元へ戻ったわけではない。8月の騎乗数は復帰戦のわずか1鞍で、9月も11鞍止まり。昨年は年間839鞍に騎乗して74勝を記録していただけに、落差は歴然としている。

 一方、同期の吉村騎手は8月に12勝を挙げ、年間勝利数で高杉騎手に並んだ。両者の勢いは、この夏を境に大きく変わっている。


「もう若さで済まされない」ファンからは厳しい声も

 今回、調整ルームへの入室が遅れた詳しい事情は公表されていない。ただ、過去にも制裁歴があるだけに、今回の戒告に対してはファンからも厳しい声が上がった。

 Xでは、「期待した人も多いと思うのに残念すぎる。もう若さで済まされない歳だろうに」と落胆する声や、「遅刻って気合いの問題だからな」と厳しく指摘する投稿がみられた一方、「若手で1番上手いジョッキーだと思ってるから、その才能と技術をくだらんことで潰してほしくない」と、才能を惜しむファンもいた。

 実際、レースでは依然として見せ場をつくっている。

 17日の新潟競馬では5鞍に騎乗し、5番人気のトラカイキャッスルと11番人気のエスカレイトで2着を確保。翌18日も1番人気のドナビッグベンで2着に入り、週末6鞍で3度の2着を記録した。

 かつての乗り鞍を取り戻すには、騎乗技術だけでなく、競馬関係者からの信頼も必要になる。

 デビュー3年目にして大きな岐路に立たされた高杉騎手。騎乗技術への評価を、再び多くの騎乗依頼につなげることができるだろうか。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。
ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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