◆イングランド プレミアリーグ 第34節 リバプール5―1トットナム(27日・アンフィールド)

 リバプールがトットナムに5―1で快勝して勝ち点82とし、4試合を残して5季ぶりのリーグ優勝を決めた。直接対決を残す2位アーセナルと15差をつけた独走で、マンチェスターUに並んで歴代最多20度目の頂点に立った。

1992年のプレミアリーグ発足後では2度目。アルネ・スロット監督(46)の就任1年目で見せた進化と、リーグ戦での先発は0試合でも献身的な姿勢を貫いた日本代表MF遠藤航(32)を、英国在住の森昌利通信員が「見た」。

 今季の開幕当時、リバプールの優勝を予言するものは皆無だった。カリスマだったドイツ人監督のユルゲン・クロップ氏が去り、英国では無名のオランダ人、スロット新監督を迎えたリバプールに関しては、誰もが苦戦を予想。ところがシーズンを通して首位を独走した。それは新指揮官の手腕によるものが大きい。

 まず、クロップ前監督の代名詞「カウンタープレス」(ボールを失った瞬間に奪い返すためにプレスをかける攻撃的な守備)を駆使し、“攻めダルマ”と言えた4―3―3の布陣を、4―2―3―1に変えた。そして、1対1に頼っていた不安定な守備を、組織的に整備。この布陣変更で復活したのが、エジプト代表FWサラーだった。スピードと決定力を兼ね備えた32歳のエースは、プレーするスペースを得て得点ランクのトップを快走。昨季のゴール数18が、今季34試合終了時点で28まで伸びた。また、情熱的なクロップ氏とは真逆と言っていいスロット監督の落ち着きも功を奏した。

開幕からのスタートダッシュにも、逆に欧州CLでの16強敗退にも浮足立つことはなかった。

 遠藤は今季、このクールなオランダ人監督の下で完全に控えに回った。昨季はリーグ戦29試合に出場し、先発20試合。今季は17試合で先発は1度もない。それでも腐らず、リードした終盤に試合を締める「クローザー」として存在感を示した。リード時に投入された16試合は全て勝利し、出場時はわずか2失点。日本代表主将は「自分がいる意味を常に示す」と守備でチームを助けた。スロット監督は「わずかな出番でも100%を出し切る」と称賛した。

 その献身的な姿はサポーターにも伝わった。20日のレスター戦(1〇0)では出番がなかったにもかかわらず、遠藤のチャント(応援歌)が勝利の印として大声で歌われた。主将のオランダ代表DFファンダイクも「彼の経験が勝利を呼び込むのに本当に重要」と明かす。日本代表ボランチの存在も、この優勝には欠かせないものだった。

 ◆プレミア優勝経験のある日本人選手 日本人として初の優勝は、01―02年アーセナルに在籍した稲本潤一だが、試合出場はなかった。12―13年にマンチェスターUに加入したMF香川真司は、移籍1年目で6得点を挙げ優勝に貢献。負傷もあり、出場20試合(先発17)でチームでの立場は準レギュラーだった。15―16年にレスターで優勝したFW岡崎慎司は36試合中28試合(5得点)で先発と主力として活躍。19―20年にリバプールで優勝したMF南野拓実は、10試合無得点とインパクトは残せなかった。

 ◆リバプール 1892年創設。本拠地はイングランド北西部にあるアンフィールド(6万1000人収容)。フットボールリーグ(プレミアリーグ創設以前の最上位リーグ)で18回、プレミアリーグで2回の計20回の優勝は、マンチェスターUに並ぶ最多タイ。FA杯で8回、欧州CLで6回頂点に立った。応援歌「You’ll never walk alone」が世界的に有名。チームカラーは赤。主なOBはラッシュ、ジェラード、オーウェンら。

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