歌舞伎俳優の中村扇雀、中村錦之助が30日、都内で国立劇場6月歌舞伎鑑賞教室「土屋主税(つちやちから)」(東京・サンパール荒川、6月4~21日)の取材会に出席した。

 赤穂浪士の討ち入りにまつわる忠臣蔵外伝で、扇雀にとっては成駒家の芸「玩辞楼十二曲」の一つとして取り組んできた演目。

大阪での上演が多く、東京では1990年の歌舞伎座以来、35年ぶり。吉良家の隣に住む旗本の土屋主税を6年ぶりに演じる扇雀は「曽祖父の初代中村鴈治郎がやっていた形を目指そうと思う。やはり初代鴈治郎という偉大な先祖の芸を今に残すことが、私の使命であり宿命」と力を込めた。

 扇雀は明治から昭和のはじめにかけて大阪で活躍した名優・初代鴈治郎について「本当に芸が好きで、工夫をする人。公演期間中の25日、全部違う芝居をしたと言われているくらい。登場すると劇場が1分くらい、拍手が止まらなかったそうです」と逸話を明かした。それを踏まえて「初代鴈治郎はスターだから、お客さんが自分以外、誰も見ていないくらいのオーラを放っていた。初代のオーラ、存在感をどうやって出すか、イメージしていきたい」と抱負を語った。

 「歌舞伎鑑賞教室」と銘打ち、多くの学生が来場を予定している。扇雀は「歌舞伎を若い人に触れてもらう、大事な機会。オンタイムで事件が起きて、のぞき見している興奮を客席で感じていただきたい」。赤穂浪士の一人、大高源吾を演じる錦之助は「授業の一環としてくる方が多い。

そういう人に向けて、普段より一層、熱が伝わるようにしたい。(興味の)シャッターをこじ開けたい」と意欲を見せた。

 解説「歌舞伎のみかた」は落合其月役としても出演する市川青虎が担当する。6月14日は「大人のための歌舞伎入門」と題して社会人でも鑑賞しやすい午後7時開演に。また、20日の午後2時30分の回、午後7時の回は「外国人のための歌舞伎鑑賞教室」として上演する。

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