2日の金曜ロードショー(後9時)は、スタジオジブリの「君たちはどう生きるか」(2023年)が枠を45分拡大してノーカット初放送される。宮﨑駿監督にとって、「風立ちぬ」(13年)以来10年ぶりとなった同作は、米ゴールデン・グローブ賞、米アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞。
物語の舞台は第2次大戦中の日本。火事で最愛の母を失った主人公の少年・眞人は、父と共に東京を離れる。母との思い出を引きずっていた眞人は、疎開先では父と再婚した母の妹・夏子や周囲の人々になじめずに孤独な生活を送っていたが、そんな中で人間の言葉を話す青サギと出会った。
ある日、夏子の姿が見えなくなり大騒動となる中、眞人は青サギに導かれるようにして近くにある古い塔の中に迷い込んでしまう。その塔は眞人の母の大伯父が建てたもので、彼は塔の中で行方不明になっていた。実は、その塔は別の世界につながっており、眞人はその世界へと足を踏み入れていく…。
公開時は「先入観なしで映画を楽しんでもらいたい」との製作側の思いから、青サギのポスタービジュアル以外は一切情報が公開されず。記者は公開日、都内の劇場で初回上映を見たのだが、エンディングロールを見て「やっぱり〇〇が声優をやってたのか…」などと感じていたことを思い出した。
一方で、作品そのものから受け取ったメッセージは「宮﨑監督の生への渇望」だった。これは、金ローで「君たち―」の公開に合わせて「もののけ姫」(1997年)が放送された際の当コラムでも少し触れたのだが、宮﨑監督は眞人に自らを重ね合わせ、「生きる」ことを必死に追い求めていると受け取る人も多いのではないだろうか。
それは、「風立ちぬ」から本作までの間に、宮﨑監督自身が多くの「別れ」を経験していることも理由にあると思う。
ちなみに、本作には高畑さん、保田さんをモデルにしたとされるキャラクターが登場する。高畑さんは大伯父、保田さんは「別の世界」で眞人を助ける漁師・キリコ。2人のキャラクターに込められた宮﨑監督の思いを巡らせながら楽しんでほしい。(高柳 哲人)