歌舞伎俳優の尾上菊之助改め8代目尾上菊五郎(47)、尾上丑之助改め6代目尾上菊之助(11)の襲名披露公演「團菊祭五月大歌舞伎」(27日千秋楽)が2日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた。この日、8代目菊五郎の姉・寺島しのぶ(52)がスポーツ報知の取材に心境を語った。
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家族でありながら、私はイチ歌舞伎ファンでもあります。「2人菊五郎」が誕生しましたが7代目、8代目では芸の持ち味は全然違います。その違いが、2人存在することのおもしろさであり、お客さまにも堪能していただきたいところです。
いま話していて思い出したのですが、小学生のとき、弟と一緒にピアノ教室に通ったことがありました。そのとき、先生が「うさぎとカメ」の話をされたんです。弟に「あなたはカメかもしれないけど、カメは最後に必ず勝つのよ」と。私は子どものときから、危ない所があれば危険を顧みずにそこに飛び込んじゃうタイプ。対照的に弟は慎重派。ピアノの先生は彼に備わる信念のようなものを、見抜いてらっしゃったのではないでしょうか。
襲名だからといって、8代目が父に寄せる必要はないと思います。張り詰めた状態を時には少し緩めて。自分を大切に、自分の信じた道を歩んでいけばいいと思う。
8代目にしかない良い意味での内面の湿気感。以前見た「東海道四谷怪談」のお岩さんが印象的で。役の胸の内にあるドロドロしたもの。ああいう世界観は、カラッとした芸風の父にはないように感じられるので。その部分はおもしろいな、と。なので、また新たな情念の渦巻くような役を8代目で見てみたい、と思っています。(談)