◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇井上尚弥(8回TKO)ラモン・カルデナス●(4日=日本時間5日、米国ネバダ州ラスベガス T―モバイル・アリーナ)

 プロボクシング世界4団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)は4日(日本時間5日)に米ラスベガスでの防衛戦で8回TKO勝ちした。WBA世界同級1位ラモン・カルデナス(米国)に2回にダウンを奪われながらも、その後は圧倒的な攻撃力で勝利を手にした。

元WBC世界バンタム級王者で本紙評論家の山中慎介氏(42)は、改めてのその強さを実感しながらも、今後のスーパーファイトは難しい試合が続くことを予想した。

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 最後には実力差が出たが、まずはカルデナスの覚悟を持ったファイトに驚かされた。あれだけ最強王者に勇敢な打ち合いを挑んだ選手はこれまでいなかったはずだ。確かに、尚弥は久しぶりの米国での試合ということで1、2回は動きが硬いようにも見て取れた。逆にカルデナスはガードを固め、タイミング良くパンチを打っていた。そして2回のダウンを奪った左フックにつなげていった。目の肥えた会場のファンも、このダウンには逆の意味で驚いたはずだ。回を重ねるごとにカルデナスは劣勢になっていったが、それでもあきらめず一発逆転を狙いパンチを強振してきた。その姿を見て、体が動くほど興奮してしまった。

 だが、覚悟だけでは最終的に尚弥には通用しない。2回のダウンはルイス・ネリ(メキシコ)戦(昨年5月、東京ドーム)同様に驚かされたが、それ以降の修正力には、ただただ頭が下がる。ダウンさせられた左フックは危険と分かると、その後は一切同じパンチをもらっていない。

そして毎回同じことを言っているが、あの左ジャブの破壊力だ。ジャブではなく完全にストレートの威力があり、これが当たり始めるとKOの予感が漂い、ボディー、右とパンチをまとめ仕留めた。本場のファンにもモンスターと呼ばれるゆえんが理解できたはずだ。

 リング上で尚弥は次戦(9月)に関しWBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウスベキスタン)との対戦を口にしていた。12月にはWBAフェザー級王者ニック・ボール(英国)、そして来春にWBCバンタム級王者・中谷潤人(M・T)とのスーパーファイトという青写真だが、これは試合を重ねるごとに相手は強敵になっていく。カルデナスよりアフマダリエフは実力者であり、1階級重いボールとは階級の壁に挑むことになり、そして中谷だ。すべてが胸躍るスーパーファイトではあるが、尚弥であっても楽な道のりではないと思う。だからこそ期待したい。

(元WBC世界バンタム級王者)

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