◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)王座統一戦12回戦 〇井上尚弥(8回TKO)ラモン・カルデナス●(4日=日本時間5日、米国ネバダ州ラスベガス T―モバイル・アリーナ)観衆8474

 【ラスベガス(米ネバダ州)4日(日本時間5日)=勝田成紀】世界4団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥(32)=大橋=が、挑戦者のWBA同級1位ラモン・カルデナス(29)=米国=を8回TKOで下し、歴代最多タイとなる4団体統一王座4度目の防衛に成功した。2回に先制ダウンを奪われながらも逆転勝ち。

プロ30戦全勝(27KO)の節目で、世界戦KO勝利数を23とし、伝説の世界ヘビー級王者ジョー・ルイス(米国)が1948年6月にマークした世界記録を77年ぶりに塗り替えた。

 聖地ラスベガスに「イノウエ」コールが響いた。尚弥は赤コーナーのロープに飛び乗り、胸を3度たたいて右拳でガッツポーズを作った。8回。右ストレートから右アッパー→左ボディー→右ストレートの黄金コンビネーションでカルデナスをロープへ吹き飛ばすと、13連打をたたみかけてフィニッシュ。「僕が殴り合いが好きだということは証明できたと思う。すごい楽しかった」とメインイベンターの役目を果たし、うなずいた。

 ハプニングは2回だ。2万人収容のT―モバイルアリーナが騒然となった。左の打ち終わりに正面から左フックのカウンターを合わされ尻餅をついた。昨年5月の東京ドームでのルイス・ネリ(メキシコ)戦以来、キャリア2度目のダウンを喫し「非常に驚いた」。しかし「冷静に組み立て直すことができた」と3回以降はジャブで立て直し距離を修正。

7回に右の4連打でダウンを奪い返し、8回のフィニッシュにつなげた。「相手も必死に倒しに来る。ボクシングはそんな甘くないもんだと痛感した。ダウンが自分に火をつけた。やっぱりファイターなんだなと思った」

 世界戦での23KOは、伝説のボクサー、ルイスを超え世界記録となる金字塔だ。2日の公式会見で「しっかりとボクシングを見せた上で中盤にKOするのが一番いい形」と話した。予期せぬダウンもあったが、予告通りの中盤KO決着。「理想とするキレイな終わり方はできなかったが、すごくエキサイティングな試合ができた」と自己評価した。

 リング上では「次は9月に(WBAスーパーバンタム級暫定王者)ムロジョン・アフマダリエフと戦います」と宣言した。9月14日、日本で同級最強の相手を迎え撃つ。12月には日本人初(史上8人目)の5階級制覇を懸け、サウジアラビアでWBA世界フェザー級王者ニック・ボール(英国)に挑戦。そして来年、WBCバンタム級王者・中谷潤人(27)=M・T=との東京ドーム決戦を計画する。

 会見では米メディアから「中谷とはいつ戦う?」と質問され、尚弥は「いつ行いそうですか?」と隣の大橋秀行会長(60)にバトンタッチ。大橋会長は「来年の5月ぐらいですかね」と初めて具体的な時期を明言した。聖地ラスベガスから東京ドームへ。史上最高の日本人対決へのカウントダウンが始まった。

 〇…尚弥は試合後、自身のSNSで「ゴールデンウィークには魔物が潜んでいるのかも…」と、昨年5月6日の東京ドームでのルイス・ネリ戦の初回に左フックで喫した人生初ダウンに続き、2回にダウンを喫したことを自虐的に振り返った。弟の前WBA世界バンタム級王者・拓真はXで「心臓に悪い とりあえず流石ですわ」(原文ママ)とダウンにヒヤヒヤしながらも兄の強さに感心する投稿をアップした。

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