「ABEMA大相撲」の専属解説者に就任した元横綱・若乃花の花田虎上氏が、心境や横綱候補への見解、そして相撲界への提言について語った。インタビュー最終回とは。

現在の親方衆に対する印象や、大相撲の未来に抱く課題意識について語ってもらった。(取材・構成=山田 豊)

 花田氏は、現在の親方として活躍する同世代の元力士たちを見ながら、強い現実感を抱いているという「正直に言って、大変だなと思いますよ」と語る。

 「今は昔のように厳しく指導したり、手を出したりすることなんて絶対に無理。以前、番組で阿炎関(錣山)や一山本関(放駒)と昔の状況を話したら『信じられない!』って驚かれてました(笑)」

 現役引退後には自ら親方として後進指導にあたった時期もあったが、「もし今も相撲協会に残っていたら?」と聞いたみた。「それは一度も考えたことがないですね」と即答した。ただ… 「厳しい時代に現役をやっていたから、そのやり方が出てしまう懸念はあったかもしれない。でも、多分、時代に順応しようとはしていたと思います」

 自らの変化への対応力には一定の自信ものぞかせた。「親方を続けてほしかった」という声は今も少なくないという。

 「いろんな人に言われますね。ベテラン記者の方からも『なんで残らないんだ!』って本気で怒られたことがあります(笑)。うれしいのか何なのかよく分からないですけど…。きっと、僕のことは言いやすいんでしょうね」とどこか照れた様子で話した。

 相撲界を取り巻く最大の課題のひとつが「弟子の減少」だ。これに対して花田氏は、大きな社会的背景を踏まえた視点を語る。

 「どこの組織でも人が足りなくなってきている。『2040年問題』(少子高齢化・労働力人口減少による社会課題)が相撲界にも直撃するのは間違いない。いまこそ後世のことを真剣に気にすべきタイミングです」と警鐘を鳴らす。柔軟な変革の必要性を強調した。

 その上で、外国人力士の受け入れ可能性にも言及。「これまで外国籍の力士に対する門はある程度制限されてきましたが、今後はどこまで開いていくのか。慎重に進めなければいけないけれど、絶対に必要になると私は思っている。先の先まで見据えて、今すぐにでも対策を打つべきです」

 大相撲の会場で外国人観客を目にする機会も増えつつある。花田氏はずっと前から、「館内放送を英語だけでなく、多言語対応にすべき」と訴えてきたという。「小錦さんは海外で別の見せ方を模索して、相撲をプロデュースしています。

僕も、相撲がなくなるのは本当に嫌だから。もしオファーがあれば、外にいる人間としてまた力になりたいという覚悟はあります」と思いを口にする。

 そして最後に、「国技を守りたいという気持ちは、角界にいた頃とまったく変わらないです」と力を込める。

 「だからこそ、ABEMAでの解説を通じて、少しでも相撲に興味を持ってくれる人が増えてくれたら本望です」

 その視線の先には、伝統と革新の両立を目指すこれからの相撲が映っていた。(おわり)

 ◇花田虎上(はなだ・まさる)。本名は花田勝。1971年1月20日、東京・中野区出身。88年春場所、弟の光司(元横綱・貴乃花)とともに、父(元大関・貴ノ花)が師匠の藤島部屋(当時)に入門。90年秋場所、新入幕。93年名古屋場所後、大関に昇進。98年夏場所後、横綱に昇進した。2000年春場所限りで引退し、同年12月、日本相撲協会を退職。

現在はタレント、スポーツキャスターなどで活躍中。優勝5回。幕内通算487勝250敗124休。殊勲賞3回、技能賞6回。現役時代のサイズは180センチ、134キロ。得意は左四つ、寄り、おっつけ。

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