歌舞伎俳優の中村勘九郎、中村七之助ら中村屋一門による巡業公演「新緑特別歌舞伎公演2025」(全国16か所、25日まで)が各地でにぎわいを見せている。

 21年目を迎えた恒例の巡業公演。

これまでは中村屋ゆかりの演目を披露することが多かったが、「やったことのない演目をやってみよう」という七之助の発想で「高尾懺悔(たかおさんげ)「太刀盗人(たちぬすびと)」を上演している。そのほか、作品解説や質疑応答などのトークコーナー、歌舞伎の仕組みや演出を学べるミニ歌舞伎塾も好評だ。

 5日には東京・文京シビックホール大ホールで開催。七之助は「高尾懺悔」について「高尾という吉原の有名な太夫が四季折々の情景を表しながらしっとりと踊るのですが、高尾はもう亡くなっていて、亡霊なんです。静かな踊りですし、もしかしたら初心者向けではない演目かもしれませんが、特別公演はチャレンジの場でもありますので、あえて選ばせていただきました」と解説。吉原の影の部分を繊細な踊りで表現して観客を魅了した。

 続いて勘九郎は「太刀盗人」について尾上松緑、坂東彦三郎、坂東亀蔵から教わったことを明かした。「初めての演目です。いま歌舞伎座で尾上菊五郎さんと尾上菊之助さんの襲名披露公演中ですが、そちらにご出演でお忙しいはずの松緑さんと彦三郎さん、亀蔵さんに丁寧に教えていただきました。大変ありがたく、心して挑みたいです」と意欲的。勘九郎がすっぱ(スリ)の九郎兵衛、中村鶴松が田舎者万兵衛をコミカルに演じて、場内は笑いに包まれた。

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