前進座歌舞伎公演「裏長屋騒動記」(30日開幕、池袋サンシャイン劇場)の制作発表会見と公開稽古が行われ、監修・脚本を務める山田洋次監督が松竹新喜劇の曽我廼家寛太郎、前進座の柳生啓介など俳優陣へ熱のこもった演出を行った。

 同作は落語「らくだ」と「井戸の茶碗」を原作に、山田監督が前進座のために脚本を書き下ろした喜劇。

2017年に初演。今回は8年ぶりの再演となり、「上方から江戸に来た、らくだの馬」という設定を得て、山田監督が初演台本に大いに手を入れた。

 稽古が始まると山田監督は洗濯する演技をする役者たちに「何を洗ってるんですか?どうやって洗うんですか?」と細かく尋ね、役者が「羽織や、手ぬぐいやおむつを」と答えると、「おむつは何枚あるの?一枚だけ?」とオープニングの日常の芝居がリアルにみえるよう丁寧に演出。

 寛太郎が出てくる場面では椅子から立ち上がり、自ら動きをやってみせるなど熱がこもった。

 また、寛太郎の芝居には山田監督が大口を開けて笑う場面も見られた。

 山田監督は寛太郎を松竹新喜劇からキャスティングした理由について、「コメディアンがひとりいると助かる。コメディアンは特別な才能の持ち主。僕は渥美清という天才的なコメディアンと長く仕事をしたから、コメディアンの発想をよくわかってるつもり」と説明し、「(寛太郎参加により)もっと楽しく笑える作品になるだろうと思っています」と期待。

 また、自身の幼少期を振り返り、「僕の少年時代、僕の父親はサラリーマンでしたが芝居がとっても好きで、よく話をしてくれた。その中で印象に残っているのは前進座と、曽我廼家劇。僕のおやじは両方のファンでしたね。子供だからつれてってもらえなかったけど、話を聞いて想像していた。

今、その両劇団の人が一緒になって芝居をするっていうんで、おやじが生きていたらどんなに喜ぶか」と笑みを見せた。

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