◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
唐突だった。今年3月の春場所。
「大西さん、あんたの記事見てるで! 内容が一つ一つ深くていいわ!」
熱心な相撲ファンだったのだろう。その後も場所中、何度か声を掛けられた。人生で初めて知らない人から褒められたことへの驚きと喜びを感じた。
24年3月、大相撲担当として初めて春場所を取材した。最前線基地でもある支度部屋は、土俵を控える力士の大きな体、緊張感、息遣いに圧倒された。一番奥に陣取る横綱・照ノ富士(当時)の周囲は特別な空気が流れているように見え、より遠くに見えた。
それから1年。今年の春場所ではまったく違う印象を受けた。部屋は前回ほど広くは見えず、暗さを感じていた照明も気にならなくなっていた。慣れとも経験を積んだとも受け取れる感覚だった。
力士の性格や特徴も少しずつ分かってきた。
原稿一本、一本が読者に届いていることを実感し、これまで以上に丁寧な取材で、情報を届けなければと背筋が伸びる思いがした。担当2年目のスタートに際し、初心に立ち返らせてくれる出来事だった。(相撲担当・大西 健太)
◆大西 健太(おおにし・けんた)2021年入社。レイアウト担当を経て24年3月から現職。