◆プロボクシング ▽WBC&IBF世界バンタム級(53・5キロ以下)王座統一戦12回戦 WBC王者・中谷潤人―IBF王者・西田凌佑(6月8日、東京・有明コロシアム)

 WBC世界バンタム級王者・中谷潤人(M・T)が15日までに強化合宿を行っている米国ロサンゼルスでリモート取材に応じ、IBF王者・西田凌佑(六島)との王座統一戦に向けて、過去最多のスパーリングを敢行していることを明かした。合宿には専属の栄養士も帯同。

毎回の食事を管理してもらいながら、筋肉量を落とさずに減量も進められている。

 「スパーリングを中心に、練習をしています。(西田と同じ)サウスポーの選手もたくさん来てくれて、充実した練習ができています」と中谷。先月20日の渡米以降、週4回のスパーリングを実施。1日のラウンド数は10ラウンド以下が1回だけで、「米国合宿では過去最多のラウンド数ですね」とあっさり言う。ロサンゼルスで活動し、WBC世界バンタム級25位の秋次克真や地元の左構え選手を相手に、ラウンドごとに与えられる課題に対応しながら「長いラウンドを戦える体とメンタル」を鍛えている。「西田選手は距離感がいい選手。相手がどう来てもいいように、イメージしている」と中谷。「12ラウンドしっかり動ける体っていうのは作っておく。その中で、倒すというアクションを多くを起こしていきたい」

 4日(日本時間5日)にラスベガスで行われたスーパーバンタム級(55・3キロ以下)の世界4団体統一王者・井上尚弥(大橋)とラモン・カルデナス(米国)との世界戦はチームと一緒に見たという。2回、カルデナスの左フックで井上がダウンを喫したことには「驚きました」という。「カルデナス選手の頑張りというか、左フックはその試合に賭けている思いが乗った1発だったと思う」と冷静に話した中谷は「でも、その後をしっかり修正する能力こそが井上選手のすごさ、強さだなと思いました」と井上の8回TKO勝ちを受け止めた。

ともに勝ち続ければ、来年5月に東京ドームでの対戦というビッグプランが待っている。だからこそ、西田戦にかける思いは強い。

 米国合宿ではこれまで、弟の龍人マネジャーが食事の調理担当だったが、今回の合宿には、栄養士が日本から帯同。3度の食事を管理、調理して提供してくれている。料理に使う食材が豊富で、栄養のバランスも考えられている。副菜も合わせた料理メニューは彩りも鮮やかで、食欲をそそる。体が疲労していても、食事は取らなければならない。しっかり食べられるから、練習でのパフォーマンスを落とすことはない。

 「練習を見てもらい、練習量を計算してもらいながら、これが足りないだろうとか考えて、栄養のバランスも良く、ご飯を作ってもらっています。それがいいパフォーマンスにつながっている」と中谷。主菜や副菜には肉、野菜などが豊富に使われ、ここまでの3週間強、1日3食で、一つとして同じメニューはない。「毎朝、甘いスムージーを飲んでいます」と甘味や外食もOK。

米も毎食、150グラムまでは食べられるが、塩分などはグラム単位できっちり管理されており、水分や脂肪分の摂取などには細心の注意が払われている。「要望はすごく聞いてくれています。外食も一緒に行って、食べたものを計算してくれて、ダメな時にはダメと言ってもらえます。ストレスなく、やってもらっています」という。13日夜には、鶏のひき肉、豆腐、ひじきで作ったハンバーグを食べた。お気に入りは「カレー」。減量期間中においては脂質が多くなるとされる市販のルーは使わず、パウダーとトマト缶で作るカレーに舌鼓を打った。「骨付きのチキンも入れてくれて。水は使っていないそうです」と中谷。「僕もこれまでにカレーを作りましたが、ルーを使っていました」と龍人マネジャーが明かすと、中谷は「そこが大きな違いですよね」と笑ったが、驚くべきは「体重の落ち具合がいい。でも、筋肉量は落ちていない」ということ。筋肉量を毎回測って共有し、さらなる助言もしてくれる。
ビッグバンには頼もしい“参謀”がまた一人、加わった。

 米国で最も権威のある専門誌「ザ・リング」が制定するパウンド・フォー・パウンド(PFP、全階級を通じての最強ランキング)で自己最高の7位に浮上。かつて1位に君臨していたサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)の8位を上回った。「カネロより上、とかは気にしていないが、評価をいただけていることはすごい光栄」と中谷。西田戦に勝てば、リング誌制定ベルトを授与されることも「モチベーションになっている」という。「バンタム級で1番という称号だと思うので。4団体統一ができなかったとしても、そのベルトを取れれば、また一つ、評価をもらえるのかなって思う」。ビッグバンは、まだ手にしたことのないIBFとリング誌のベルトを手に入れて、井上とのビッグマッチに近づく。

 戦績は27歳の中谷が30戦全勝(23KO)、28歳の西田が10戦全勝(2KO)。(谷口 隆俊)

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