東海道五十三次の県内にある地点ごとで注目のスポットなどを取り上げる企画(随時掲載)の今回は、県内22か所ある中で21番目の「新居宿」。地元のふとん店が、郷土菓子「すわま」をかたどった枕「すわマクラ」を販売。
郷土菓子「すわま」が枕に変身した。浜松市などに2店舗をもつ「ふとんの水谷」の水谷寛社長(71)に商品開発の経緯を聞いた。同社が扱うふとん、座布団などで使う伝統工芸品「遠州綿紬(つむぎ)」の新たな用途を探る中、従業員に意見を募った。「話題性のある面白い商品で街を盛り上げたい」との思いが2年前に形になった。背当てやクッションとしても使える。
「すわま」とは米粉、砂糖、しょうゆ、食塩などで作られた小判型の餅菓子。江戸時代に江戸で生まれた和菓子「すあま」が東海道を通って伝わったとの説がある。ひな祭りの菱餅に替わる供え物などとして家庭でも作られ、親しまれてきた。その伝統が評価され、23年5月には文化庁の「100年フード」に認定された。
「すわマクラ」の反響は大きく、お客さんの要望に応えてポシェット、キーホルダーなど“すわま関連グッズ”を展開。遠州綿紬の反物から商品を作る際に出る端切れの有効活用にもつながった。
お菓子そのものでは、湖西市の飲食店「cafe&kitchen きんたろう」が季節限定で「焼きすわま」を提供。甘じょっぱい味と、モチモチした食感を楽しむことができた。同市の「菓子処 まんじゅや」では夏場を除いて「ミニすわま」を販売。地域文化の発信を担うユニークな取り組みが、より広まってほしいと感じた。
(伊藤 明日香)
◆新居宿 東海道31番目の宿場町。舞坂宿と「今切渡し」と言われる渡船で結ばれていた。かつて新居関所があり、幕府にとって箱根と並ぶ重要な関所とされていた。日本で唯一現存する関所として国の特別史跡に指定されている。