2018年の「R―1ぐらんぷり」で優勝した漫談家・濱田祐太郎(35)が30日に、大阪・なんばグランド花月の公演「盲目のお蕎麦(そば)剣士が巻き起こす新喜劇」で念願の吉本新喜劇初出演を果たす。視覚障害のある濱田にとって、身体的な動作が避けられない新喜劇への出演は大きな挑戦。
念願の吉本新喜劇への出演は、昨年の大阪マラソン出場がきっかけだった。「テレビの企画で短い距離を走ったんですけど、出場した芸人が集まる控室があったんです。そこで僕のサポートで一緒に走ってくれた『もも』の『まもる。』(NSC大阪校の同期)が、寛平師匠とご飯に行く機会をつくってくれて…。お酒の酔いに任せて、自分の白杖と寛平師匠の杖で戦いたいんですって言ったら、寛平師匠が『それめっちゃおもろいやん』ってなって」と、経緯を明かす。2軒目のカラオケ店で寛平GMから「本気でやる気があるなら、周りに話をする」と言われ、約1年半かけて実現にこぎつけた。
濱田が演じるのは、かつてすご腕だった剣の使い手。足を洗ってそば屋で働いていたところ、過去を知る男の来訪を受け、抗争、策略に巻き込まれていくというストーリーだ。話芸で成立する漫談と違い、動きのある芝居だけでも大きな挑戦だが、なかでも困難を極めるのが殺陣のシーン。新喜劇座員・平山昌雄(50)の指導で特訓中だ。
「シンプルなんですけど、周りが見えないので、真っすぐ進むっていうのがそもそも難しい。
平山が刀を持って構える姿を実演しても濱田には見えないため、手の角度や胸の張り方、足腰の柔軟性まで、すべて言語化して伝えられる。「すごく丁寧に教えてくださいます。悪役や斬られ役の声を頼りに相手と向かい合い、刀を向けるように工夫しています」。悪戦苦闘しながらも、充実の毎日だ。
XやYouTubeで積極的に発信を続け、毒舌キャラとしても定着してきた。今後挑戦したいことの一つが、バラエティー番組のMC。「人の話に魅力があるトーク番組をやりたい」と意欲をのぞかせる。とはいえ、まずは今回の新喜劇公演を成功させることが大前提。「寛平師匠と、平山昌雄さんに何とか恩返ししたい」。その言葉に、あまり表には出したがらない優しさがにじみ出た。
〇…街中で視覚障害者を見かけた場合、どう振る舞うべきか。濱田には、当事者ならではの持論がある。
◆濱田 祐太郎(はまだ・ゆうたろう)1989年9月8日、神戸市生まれ。35歳。2012年にNSC大阪校に35期生として入学。13年に漫談家としてデビューした。18年「R―1ぐらんぷり」で優勝。先天性の視覚障害があり、視力は右目で明るさを認識できる程度。ゆりやんレトリィバァは、首席で卒業したNSCの同期。