◆体操 NHK杯 第2日(17日、東京体育館)
女子個人総合で、杉原愛子(25)=TRyAS=が2015年以来、男女通じて最長ブランクとなる10年ぶり2度目の優勝を果たした。4種目合計54・665点でトップとなり、2位だった4月の全日本選手権の得点と合わせて162・163点をマーク。
優勝が決まった瞬間、杉原は驚きの表情を浮かべた。15歳の時以来、10年ぶりにつかんだ女王の座。「10年後に優勝するなんて想像していなかった。こういうふうにまた花を咲かせられてうれしい」。08年の大島杏子の6年ぶりを超える大会最長ブランクVで世界舞台に復帰。声を弾ませながら、満面の笑みを振りまいた。
会場の視線を独り占めする逆転劇だった。首位の岸と0・933差でスタート。2種目を終えて1・600点差まで開いたが平均台で岸が落下し、差は0・2点に縮まった。
前半は1人で演技する不安、悔しさを床をたたくなどで表現。曲調が明るく変わると、大好きな体操を楽しむ姿で観客をあおり、会場から手拍子が湧いた。フィニッシュでD難度の後方屈身2回宙返りを決めると頭の上に王冠をポーズ。13・933点をたたき出し、逆転で女王に返り咲いた。
体操人生を謳歌(おうか)している。22年に一時は第一線を退いたが、1年半後に復帰した。会社を立ち上げ、プロとして生活。自身も悩んでいた女子選手の不安を少しでもなくすため、足の付け根から太もも部分まで覆われた新しい形のレオタード「アイタード」を開発し、23年9月に試合で着用するなど話題になった。拠点は大阪だが、社長として全国を飛び回るため、練習会場を転々とするなどの苦労もあるが「楽しみを伝え、女性アスリートとしての大変さとかも発信して、普及できれば」との思いで取り組んでいる。
28年ロサンゼルス五輪は頭にはない。
◆NHK杯の最長ブランクV 女子は大島杏子が02年に初優勝し、08年に返り咲いた6年ぶりが最長だった。男子でも山脇恭二(80年→86年)、米田功(98年→04年)の6年ぶりが最長で、杉原の10年ぶりはそれを超える。
◆杉原 愛子(すぎはら・あいこ)1999年9月19日、東大阪市生まれ。25歳。体操経験者の両親、姉の影響で4歳から競技を始める。東京・藤村女高―武庫川女大。15歳の2015年にNHK杯初優勝。同年アジア選手権個人総合で金メダル。