古馬牝馬のマイル女王決定戦、GIヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)が5月18日に行なわれる。
大波乱となった先週のGINHKマイルC(東京・芝1600m)同様、"荒れる"レースとして知られる一戦だ。
一方で、ふた桁人気馬が馬券圏内(3着以内)にしばしば突っ込んできており、3連単は2020年を除いてすべて万馬券。2015年には2070万5810円という超ド級の高額配当が飛び出しており、90万円超えの高配当も2017年、2024年と2度も出ている。こうした状況を受けて、スポーツニッポンの『万哲』こと小田哲也記者はこう語る。
「牝馬限定GIらしい特徴? というべきか、過去10年"前走1着馬の優勝なし"といった特異な傾向もあるんです。言い換えれば、前走が苦手な舞台設定で負けた馬の"一変"が期待できる、ということですね」
先にも触れたとおり、同じ舞台で行なわれるNHKマイルCも波乱の傾向が強いが、その要因においては「大きな違いがある」と小田記者は言う。
「NHKマイルCは短距離系の馬も多数出走してきて、序盤から流れて、最後は底力勝負になることが多いです。現に今年のNHKマイルCは『逃げ馬不在』と言われていましたが、レース前半の4ハロン44秒6-後半の4ハロン47秒1と極端な前傾ラップになって、勝ったパンジャタワーの上がりも34秒2と、高速馬場でありながらそこまで速くなりませんでした。
翻(ひるがえ)って、ヴィクトリアマイルは本来1800m以上の中距離を主戦場としている馬も『牝馬同士なら』と、多数出走してきます。片や、スプリント系の馬はまずはGI高松宮記念(中京・芝1200m)に全力投球するため、比較的出走馬は少ないです。今年も同レースで好走したナムラクレア、ママコチャの名前はここにはありません。
こうしてスプリント系の馬が少ない分、道中流れる確率は低く、展開的には"中だるみ"することが多いです。結果、上がり3ハロン32秒台後半~33秒台前半のキレ味を秘める瞬発型が活躍する傾向が強くなっています。
そうなると、持続力やスタミナはあまり必要ありません。よって、2015年、2016年と連覇を遂げたストレイトガールや、昨年のテンハッピーローズのように、1200m戦や1400m戦で活躍する馬の好走例が目立っているのです。
ただし、1800m以上を主戦場とする馬でも、強烈な決め手のある馬は最後に突き抜けていきます。2019年のノームコア(上がり33秒2)、2020年のアーモンドアイ(上がり32秒9)などが、そのいい例です。つまり、ヴィクトリアマイルで求められるのは、瞬発力、ということです」
そこで小田記者は、今年のレースで大駆けが見込めそうな2頭の伏兵候補の名前を挙げた。1頭目は、ラヴェル(牝5歳)だ。
「昨秋、GIエリザベス女王杯(11月10日/京都・芝2200m)で2着と好走し、GIIIチャレンジC(11月30日/京都・芝2000m)で勝利して完全復調したと思いましたが、この春はGII金鯱賞(3月16日/中京・芝2000m)9着、前走のGI大阪杯(4月6日/阪神・芝2000m)11着と惨敗。その評価は急降下しています。
ですが、金鯱賞は思いのほか馬場が悪くなったことが響いての結果。大阪杯は勝ち時計1分56秒2と、結果的に高速決着になったことが痛かったです。
とはいえ、ラヴェルには小田記者が重視する"瞬発力"、強烈なキレ味があるイメージはないが、その点はどうなのだろうか。
「コーナー4つの競馬では、そこまで速い上がりは記録していませんが、2歳時のGIIIアルテミスS(1着。東京・芝1600m)ではメンバー最速の上がり33秒0をマーク。もともと瞬発力のある馬で、同レースではのちの三冠牝馬リバティアイランドを負かしています。
東京ではそのほか、GIオークス(芝2400m)4着、休み明けで良化途上だった昨秋のリステッド競走・オクトーバーS(芝2000m)6着と崩れずに走っていて、コース的にはベスト。折り合って運べている近走の内容からしても、決め手を生かす形の競馬をすれば、上がり3ハロンで32秒台を出せる可能性を秘めています。
母系に流れているダイワメジャー、キョウエイマーチの血を考えれば、マイルへの対応力も備えています。3歳時のGI桜花賞(阪神・芝1600m)以来となるマイル挑戦が起爆剤にならないか? と思っています」
小田記者が注目するもう1頭は、前走のGIII愛知杯(3月23日/中京・芝1400m)を10番人気で勝ったワイドラトゥール(牝4歳)だ。
「1400m戦を得意にしているという点では、昨年の覇者テンハッピーローズと似ています。東京コースは今回が初めてですが、中京の前走と、2歳時の新潟での新馬戦を勝っていて、左回りがマイナスになるとは思いません。昨年の桜花賞(6着)では、勝ったステレンボッシュ(牝4歳)とはコンマ3秒差、2着アスコリピチェーノ(牝4歳)とはコンマ2秒差。今回、上位人気が予想される面々と差のないレースを見せており、逆転不可能というほどの底力の差も感じません。
その桜花賞で記録した上がり33秒5がこれまでの最速の上がり。展開次第ではもっと速い上がりが必要になるかもしれませんが、まだまだ成長段階で伸びしろはあります。
心配なのは、過去10年で勝ち馬がいない"前走1着"という点だけ。ともあれ、今年から新装した愛知杯組がクローズアップされることはないでしょうから、馬券的な妙味は十分。勝てずとも、2、3着に飛び込んでくれば、好配当が大いに期待できます」
NHKマイルCに続いて、ヴィクトリアマイルも波乱の決着となるのか。そのときは、ここに挙げた2頭がオイシイ配当をもたらしてくれるかもしれない。