大阪・関西万博が開幕して1か月が過ぎた。18日までに300万人以上が来場して盛り上がりを見せつつある一方、“ネパール館なかなか開館しない問題”や“想定入場者数計2820万人早くも困難問題”など批判にさらされる点も。
5月某日。東ゲートで待ち合わせした「万博おばあちゃん」は、軽やかな足取りで記者にあいさつしてくれた。昨年負った右くるぶしの骨折が完治してないんじゃ…と尋ねると「家帰るとじんじん痛むわよ」と笑ってスタスタ早歩き。万博ってハッピーな回復効果があるんだなぁと妙に感心した。
山田さんは、毎日万博に通っている。「入場券1枚でパスポートもビザもいらない世界旅行ができる。素晴らしい場所ですよ」。開幕1か月を経た万博を、実際どう感じているのだろうか。
「入場者数、金銭面、政治面と成功を測る指標がありますが、一番重要なのは後の世代にどう遺産を残すかってこと。
万博は文化を残す。そうとらえている。
「大阪万博は人類の進歩を強烈に心に残しました。愛知万博は環境博。脱プラスチックやエコなどのレガシーが残りました。今回、一体何が文化になるのか楽しみ。ただ跡地がIR(統合型リゾート)なのは残念。万博を生かしつつ、子供たちのための何かを作ればいいのにね」
協会側は当初、「並ばない万博」を旗印としたが、実際は行列が多数。取材当日朝には、人気の米国館で2時間待ちの表示があった。
「行列こそ万博の醍醐(だいご)味。並ばないと味気ない。
一方で今回の万博は、全てキャッシュレス。スマホ必須だが、その状況にも少々戸惑いを感じている。
「(画面ばかりを見てしまうため)入場者同士の交流がないんですよ。05年の愛知万博の時は、入場列の前後でおしゃべりが始まり、先に入った人が情報提供したり『ここが良かった』とかの自慢合戦が楽しかった。人間のつながりがなくなるのは進歩と言えない。アナログ部分は今後残されるべきとも思いましたね」
万博のプロだけに、懸念点も指摘する。
「会場内に今日のイベントを電光掲示板とかで教えるとか、もっと情報提供をしてほしい。ベビーカーの方を優先ゲートに並べるように改善してほしいのですが、協会には細やかな配慮がないですね。あと暑さ対策。屋根付きのベンチや休憩場が不足してます。
万博協会にも問題があると感じている。
「お金の使い方、相当間違っています。事前広報に使いすぎ。どれだけの人が『行きたい』につながったのか。東京のマスコミを中心に批判されているのも、広報の対応のまずさが原因。私も万博前に販促に携わりましたが、連携がまるで取れていませんでした」
とはいえ、種々の批判も収まってくるとみている。
「70年大阪万博も『反博』という反対運動が起きました。愛知万博でも反対があったのですが、最後は2200万人が来場。結局は『ためになった、良かった』ってなるはず。だって万博、楽しいんですもの」
話の終盤。山田さんはオランダ大使館関係者の男性が通りかかるのを見つけるとあいさつし、ハグ。「私の話はもういいから。
◆愛知在住 部屋借り各地へ 万博おばあちゃんは愛知県瀬戸市在住。今回はマンションを借り上げ、夫と息子の3人で毎日欠かさず万博に通っている。5月中には胆のう検査のために瀬戸へ帰る日もあるが「日帰りして万博は必ず行く」。計半年で、かかるお金は家賃も合わせて家族1人あたり100万円と意外に安上がりだ。関西ではメディアに引っ張りだこ。1日最高で5社が取材に来たこともあり、頻繁に「万博おばあちゃんですね、写真撮ってください」と声をかけられる。
05年、病気療養のリハビリとして医師に勧められた愛知万博に全185日通い、万博参観に目覚めた。その後は08年にサラゴサ(スペイン)、10年に上海(中国)、11年に麗水(韓国)、14年にミラノ(イタリア)、17年にアスタナ(カザフスタン)、23年にドーハにも来場。
◆関西万博主な事件簿
▼4月13日 開会。ブルーインパルスの展示飛行が天候悪化のために中止。東ゲートで携帯がつながりにくくなるなどの通信障害勃発。
▼14日 アンゴラ館が技術的調整を理由に一時閉館。
▼16日 ブラジル館とチリ館が3日遅れで開館。
▼22日 会場直結の地下鉄中央線が車両故障で約1時間にわたり運転を見合わせ。来場者ら4000人が足止め。
▼26日 空飛ぶクルマのデモ飛行中にプロペラなどの一部が破損。
▼29日 舞洲パークアンドライド区間シャトルバスが待機場で接触事故。
▼30日 ベトナム館が開幕から17日遅れで開館。
▼5月1日 インド館とブルネイ館が開幕から18日遅れで開館。