◆大相撲夏場所9日目(19日、東京・両国国技館)
十両で西同筆頭の草野(23)=伊勢ケ浜=が8勝1敗で勝ち越しを決めた。先場所で新十両の連勝記録を塗り替えた逸材は、日翔志(ひとし、27)=追手風=を押し出し、初土俵から所要7場所となる来場所での新入幕をほぼ確実とした。
“令和の新怪物”の進撃が止まらない。立ち合いで張り差しに来た相手をもろ手で突き放し、間合いを作ると、強烈な突き押しの連打で土俵外に押し出した。「立ち合いでしっかり相手を見て当たった。突き放せて、手も伸びていた。それが勝因」と納得の表情。硬さがあったという初日こそ黒星を喫したが、8連勝で9日目に勝ち越しを決め「最初の目標は達成できた」とうなずいた。
新十両の先場所は記録ずくめの優勝を果たし、強烈なインパクトを残した。初日から12連勝は、23年秋場所で9連勝した大の里らの新十両連勝記録を大幅に更新。12日目での優勝決定は48年ぶりで、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降で3人目の快挙だった。今場所前は、部屋付きの照ノ富士親方(元横綱・照ノ富士)らに指導を受けて、相手に研究されることを想定した稽古を重ね「先場所と比べてマークされて、あまり勝てないんじゃないかと思われていたけど、自分も相撲も少し変えながら取れた」と自信を深めている。
ザンバラ髪の23歳は十両筆頭で勝ち越したことで、所要7場所で7月の名古屋場所での新入幕を決定的とした。23年9月に幕下付け出し制度が変更。10枚目格(大の里ら)、15枚目格(伯桜鵬ら)での付け出し資格が廃止されたため、草野は昨年夏場所に同最下位(60枚目格)で初土俵。過去のスピード入幕記録と単純比較はできないが、2場所での十両通過は過去5人。大の里、伯桜鵬、安青錦ら近年の猛者たちの系譜に名を連ねることになる。
伊勢ケ浜部屋では尊富士や伯桜鵬らと稽古で胸を合わせ、距離感を肌で感じてきた。「幕内は力とデカさがさらに違う。通用する体作りをして、戦えるように頑張っていきたい」。競輪一家に生まれた23歳が、一気に“スピード”出世の道を駆け上がっていく。(林 直史)
草野 直哉(くさの なおや)
▽生まれとサイズ 2001年6月25日、熊本・宇土市生まれ。23歳。183センチ、151キロ
▽競技歴 6歳で相撲を始め、熊本・文徳高から日大に進み、23年世界選手権男子重量級優勝。
▽得意技 右四つ、寄り
▽幼なじみ 元十両で東幕下16枚目の川副(26)を慕う。保育園からの幼なじみで小中高大と重なり、同じ伊勢ケ浜部屋に所属。「川副先輩と大一番を取ってみたい」
▽競輪一族 親族に競輪選手が多く、父・信一さん(53)は通算172勝。親類の森内章之さん(57)は195勝を挙げている。
▽趣味 サウナ
◇十両スピード通過での新入幕 十両を1場所で通過し新入幕を果たしたのは、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降では7人。近年は2013年秋場所入幕の遠藤、24年春場所入幕の尊富士ら。2場所での通過は5人で、24年初場所入幕の大の里、25年春場所入幕の安青錦ら。