全日本大学駅伝関東地区選考会(5月24日、神奈川・レモンガススタジアム平塚)で東洋大は次点の8位に終わり、18年ぶりに本戦出場を逃した。1万メートルのレースを各校2人ずつ4組が行い、8人の合計タイム上位7校が本戦(11月2日、名古屋市熱田神宮西門前~三重・伊勢市伊勢神宮内宮宇治橋前=8区間106・8キロ)の出場権を獲得。

今年1月の第101回箱根駅伝9位で継続中としては最長の20年連続でシード権(10位以内)を守った東洋大は、7位の日体大と11秒36差で敗退した。その翌日、約2時間のミーティングを行い、現時点の力不足を認めた上で、第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)に向けて巻き返しを誓った。

 18年ぶりに伊勢路の戦いがない秋を迎えることが決まった東洋大は、新春の箱根路でリベンジする覚悟を固めた。その第一歩は、現時点の弱さを認めることだった。

 主な敗因は三つある。〈1〉箱根駅伝4区3位の岸本遼太郎(4年)、同5区9位の宮崎優(2年)ら主力の欠場〈2〉第2組を走った薄根大河(3年)の失速〈3〉各校のエースが集う最終組で力負け。東洋大ランナーは、選考会敗退という事実を、それぞれ、真正面から受け止めた。

 〈1〉について、主将の網本佳悟(4年)は「選考会の申し込み記録は11番目だったので、チーム全員が危機感を持っていましたが、ベストメンバーで臨むことができませんでした」と冷静に話す。チームメートに直言したキャプテンは自身についても厳しく言及。「本来であれば最終組は僕と緒方澪那斗の4年生が走らなければいけなかったのに、2年生に託すことになってしまい、申し訳なかったです」と反省した。

 〈2〉の薄根は第2組で個人40人中33位。通過した上位7校では個人成績が30位台の選手はいない。

ひとつのミスも許されない戦いでミスが生じた。薄根は箱根駅伝では10区で8位以下4校中3校がシード権、1校が予選会行きというシビアな戦いで勝ち残り、シードを死守した立役者。箱根路で、これ以上ないという修羅場をくぐり抜けたが、今回の伊勢切符を懸けた戦いでは実力を発揮できなかった。「僕の甘さが出てしまいました。実力不足でした。関東学生対校選手権ハーフマラソンで転倒して途中棄権した後、流れが悪くなり、自信を持ってスタートラインに立てなかった。緊張してプレッシャーを感じました」と率直に話した。

 〈3〉の最終組はケニア人留学生や中大の27分台ランナー・溜池一太(4年)ら実力者がそろった中、新エース候補の松井海斗と箱根駅伝7区12位の内堀勇の2年生コンビが出走。そろって自己ベスト記録をマークしたが、個人順位は9位、27位にとどまり、第3組終了時点の8位から浮上できなかった。むしろ、7位との差は開いた。松井は「中盤までじっくり走って終盤に勝負するという自分が得意とする型通りのレースをしてしまいました。第3組終了時点で出場圏内(7位以内)だったら、それでも良かったかもしれませんが、今回は圏外だったので、序盤から留学生や溜池さんに食らいついて、勝負しなければいけなかった。

自己ベスト記録でも意味はありません」とエースとしての責を負った。

 それぞれ、言い訳することなく、敗戦を認めた3人は、この悔しさを糧にするつもりだ。昨季は故障に苦しみ、学生3大駅伝に出場できなかった松井は、4月の日本学生個人選手権5000メートルで優勝し、新エース候補として名乗りを上げた。「箱根駅伝では2区を走るつもりで練習しています。前半から突っ込んで、後半も勝負できる力をつけたい」ときっぱり話す。薄根は2年連続で箱根路での活躍を期す。「勝負どころの9区か10区で勝ちきる走りをしたい。復路のエースと呼ばれるように頑張ります」と前を向く。

 網本主将は「チームミーティングで『全日本大学駅伝がない分、まず、出雲駅伝(10月13日)で上位で戦おう』という話をしました。最近、出雲駅伝で上位争いができていません。出雲で戦えなければ、箱根でも戦えません。箱根駅伝では確実にシード権を獲得し、さらに上を目指します。

東洋大の定位置は3位以内と思っています」と強い口調で話した。網本は前回の箱根駅伝では8区2位と好走。「一選手として、どの区間を任されても区間賞を狙っていきます」と力強く語った。

 指揮官も厳しい現状を正面から受け止めている。「全日本大学駅伝選考会では、1月の箱根駅伝でシード権を逃した大東大、順大、日大、中央学院大、日体大、それに本戦に出場できなかった東海大が強かった。大学駅伝のレベルが急激に上がっています。危機感を持って夏合宿に臨みます。出雲駅伝は一度、しっかりと仕上げて出場します。その後、全日本大学駅伝がないことをプラスにとらえて、10月下旬から11月にかけて、もう一度、しっかり、走り込みます」と酒井俊幸監督は表情を引き締めて話した。

 第102回箱根駅伝は東洋大の真価が問われる戦いになる。「今回の敗退を重く受け止めています。悔しい思いを全員が持っています」と網本はチームの思いを代弁した。

弱さを認める強さを持つ東洋大は「箱根への道」を愚直に走り続ける。(竹内 達朗)

 ◆第102回箱根駅伝の展望と東洋大の戦力 前回優勝の青学大、2位の駒大、3位の国学院大、4位の早大、5位の中大は今季も戦力が充実。同6位の城西大は「4代目・山の神」候補の斎藤将也(4年)を軸に戦う。同7位の創価大は小池莉希(3年)らが関東学生対校で活躍し、勢いがある。東洋大は前回、5区の宮崎優(2年)、6区の西村真周(4年)がいずれも区間9位。山の特殊区間は手堅い戦いが期待できる。同3区8位の迎暖人(2年)、同4区3位の岸本遼太郎(4年)も前回以上の走りが見込める。1区候補の緒方澪那斗(4年)、2区候補の松井海斗(2年)が強豪校のエースに食らいつけば上位争いが見えてくる。

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