巨人のファーム選手の今を伝える「From G」。第9回は育成の三塚琉生外野手(21)。
(取材・構成=小島 和之)
大けがを乗り越え、左の大砲候補が才能を開花させつつある。三塚は5月9日に初めて2軍昇格を果たすと、16試合に出場して打率3割2分6厘、3本塁打、9打点。長打率はチームトップ5本塁打のティマの3割8分を上回る5割6分5厘をマークしている。
「思っていた以上には長打が出ているので、3軍から2軍に昇格する時に考えていた以上にはやれている。(3軍と比べ)投手の球が強く、変化球のキレが違う。その中でも失投が全くないわけではないので、今はその球を逃さないようにできているのかなと」
武器の長打力には手応えを得ている一方、打率や出塁率の向上につながる打席でのアプローチには課題が残る。
「低めのボール球をどれだけ見極められるか。フルカウントから低めのボール球を振って三振してしまうことがあるので、そこを見極めて四球を取れるだけで打率も出塁率も上がる。打率は最低でも3割は残しておきたい」
チームでは主砲・岡本が左肘靱帯(じんたい)損傷で長期離脱中。
「追い込まれるまでは空振りやファウルになっても自分のスイングをする。ここでチームに必要な選手になれるようにやっていきたい」
自分らしさを失わないため、大切にする言葉がある。
「『豪打一振』という言葉で、一振りで試合の流れを変えるという意味がある。長打にはこだわりがあります」
水野スカウト部長が「吉村禎章2世」と評した打撃センスを持つが、長打を生み出す下地は大けがによる離脱中に作り上げられた。1年目の23年6月の3軍戦で左膝後十字靱帯損傷および左膝内側半月板を損傷し、同7月に手術。1年を要したリハビリ期間で地道な肉体作りに励んだ。
「あの1年で体は変わったと思う。しんどい気持ちはあったけど、『今の時間が大切なんだ』と思いながら。地道に上半身のトレーニングはずっとやっていました。体脂肪率は20%前後から15%くらいになって、今の打撃にもつながっている感じがあります」
亀井1軍打撃コーチのような勝負強い打者が目標。
「亀井コーチの敬遠されてからのサヨナラホームランが忘れられなくて。すごい勝負強さに憧れています。3軍では4番として、いかにチャンスで打って貢献できるかを意識してきた。2軍で打順が変わっても常に心がけています」
トレードマークは特徴的な太い眉毛。最近では人気漫画「北斗の拳」の主人公にちなみ、「ケンシロウ」という新愛称も定着してきた。支配下に昇格した暁にはあるプランを練っている。
「年齢を重ねるにつれて嫌になってきたんです。支配下になれたら、ちょっと整えようかなと(笑)」
フルスイングから描かれる放物線が、2ケタ背番号、そして“イメチェン”につながる。
◆三塚 琉生(みつか・るい)2004年5月10日、千葉・柏市生まれ。21歳。増尾西小1年時に増尾レッドスターズに入団、逆井中時は八千代中央シニアに所属。
◆駒田3軍監督「2軍でも“らしさ”失わず成長して」
三塚の魅力はやはり長打力。3軍では変化球を待って打ったり、見極めたりという部分が非常に上手になり、率が残せるようになりました。投手の質が上がる2軍でも、“らしさ”である強いスイングを失わずに成長していってもらいたいと考えています。
本塁打になる、ならないは関係なく、強い打球でHランプをつけていくことが大事。今後、本塁打を増やすために打球角度を上げていくべきという意見が出てくるかもしれませんが、僕はまだ早いと思っています。