◆歌舞伎座「六月大歌舞伎」(27日千秋楽)

 末頼もしい少年なのである。先月に続き今月も「8代目尾上菊五郎、6代目菊之助」襲名披露興行。

その菊之助。立役、女形、舞踊にとまだ11歳とは思えないステキな舞台を披露している。

 めでたい初日の朝食が白飯、みそ汁、シャケ、好物のギョーザ。俳優手帳である「かぶき手帖」が愛読書という歌舞伎大好きの彼はパワー全開。やる気満々だ。

 昼の「車引」は梅王丸。荒事の大役だ。声変わりと闘いながらの第一声「桜丸か!」が力強い。あみ傘を上げて見せた筋隈の顔が品もあり勢いもある。足を大きく踏み出した元禄見得がまたいい。見せ場の飛び六方は何と10歩で弾むように駆け抜けた。「出来ました、若音羽!」

 夜の「口上」で鋭い目付きのあいさつをした後の「連獅子」は仔獅子の精。

最初の出。「あ、かわいい!」。突き落とされた崖から駆け上がる必死な思い、父にたどり着いて顔を見上げる表情のあどけなさや26回もの毛振りも父に負けまいという強い意志を出せる少年だ。先月の「道成寺」といい、踊りが巧(うま)い。

 7代目菊五郎の若き日は美しい女形だった。初代辰之助(3世松緑)の逝去によって本格的に立役に進んで、8代目も若手時代は目を奪う美形でその後、立役と兼ねる役者になった。

 菊之助は早くも立役と女形を修業すると目標を据えている。個人的には願わくば、祖父のような江戸の風を感じさせる役者になってほしいのである。(演劇ジャーナリスト)

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