◆日本生命セ・パ交流戦 2025 巨人2―0楽天(7日・東京ドーム)
巨人が今季10度目の0封勝ちで楽天を下し、3日に肺炎のため89歳で死去した長嶋茂雄終身名誉監督に弔いの白星を届けた。6回2死から先制ソロを放った増田陸内野手(24)に続き、代打・丸佳浩外野手(36)が右中間席に今季1号ソロを運んだ。
天からの力が後押しした。ミスターの教えを胸に、丸が振り抜いた。打球は長嶋さんがほほ笑む「セコム」のデジタル広告看板と、背番号「3」のユニホームが掲げられたちょうど下の右中間席へ。貴重な追加点となるソロが丸のバットから生まれた。長嶋さんが3日に死去してから4戦目で待望の初勝利。弔いの白星を届けることができた。
「今日一つ勝てましたし、僕も一本いい当たりが出たので少しは、本当に少しはいいご報告ができるんじゃないかなと思います」
増田陸のソロで先制した直後の6回2死からヘルナンデスの代打で登場。1ボールから藤平の外角149キロ直球に反応し、軸回転で鋭く振った。右大腿(だいたい)二頭筋筋損傷で出遅れていたベテランの今季1号。
長嶋さんへの感謝は尽きない。広島から18年のオフにFA権を行使し、巨人、ロッテ、宣言残留を容認していた広島を含む3球団からラブコールを受ける中、丸はミスターから直筆の手紙をもらった。共に千葉県出身という縁もあり「一緒に野球が出来たら僕としてもうれしい」という熱い“メッセージ”が書かれていた。「感激しましたし、うれしかった」。幼少期からG党の丸はレジェンドの言葉に移籍への背中を押された。「(手紙は)僕にとって神社で祭られているようなもの。絶対に子供とかも触れないところにあります」と大切に保管してある。追悼アーチが巨人では通算766安打目で、球団のFA加入選手では単独最多安打。あの決断があったから今につながっている。
教えを思い返していた。3日にミスターが死去してから、ちょうど4年前の映像が流れていたのが目に入った。21年6月6日。不振で2軍落ちしていた自身に会うために長嶋さんがG球場に電撃訪問した。構えた際に“猫背”になっていた姿勢の矯正や、力を入れた腹を中心に回転することなど1時間、熱血指導してくれた。「テレビで僕を指導している映像とかを見て、改めてあの時の記憶がよみがえった。あの時に教えていただいたことをまた意識しながらです」。12打席連続無安打と苦しんでいた男が、感謝の放物線を描いた。
最後は丸がウィニングボールをつかみ、連敗を5で止めた。阿部監督は「チームを救ってくれたホームランだった」と称賛。長嶋さんの存在について改めて問われた背番号8は言った。「初めてプロ野球を見に行った時のジャイアンツの監督は長嶋さん。
◆長嶋さんの丸への指導 21年6月6日、長嶋さんが不振で2軍落ちした丸に打撃指導するためジャイアンツ球場を電撃訪問。「背中が丸まると軸が崩れる。そこが気になっていた。フォームが安定してなかった」と体の中心にある“おなか”を軸に、左足体重で回転することなどを助言。約1時間、構えの姿勢や体重移動までみっちり、ミスター流をたたき込んだ。