◆女子プロゴルフツアー ヨネックスレディス最終日(8日、新潟・ヨネックスCC=6339ヤード、パー72)
首位と4打差の6位からスタートした20歳の高野愛姫(あいひ、トラスト銀行インドネシア)が9バーディー、1ボギーの64で回り、通算15アンダーでツアー初優勝を飾った。5メートル以上のミドルパット、ロングパットを次々と決める神がかったプレーで大逆転を果たした。
最終組の2組前で回った高野がホールアウトした時点で優勝が決まった。4打差2位のイ・ミニョン(韓国)はすでにホールアウト。最終組で回る3位の宮田成華(日立建機日本)は17番をプレー中だったが、5打の大差があり、逆転は不可能。「18番のリーダーボードを見て5打差もあったので、パーなら優勝と分かっていました」。ツアー初優勝は接戦になることが多い中、20歳の高野は圧勝で栄冠を手にした。
8番で7メートル、9番で5メートル、10番で7メートルの長いバーディーパットを沈めた。さらに11番では3メートルのバーディーパットをしっかり決めて4連続バーディー。一気に抜け出した。
今季からツアーに本格参戦し、最高成績は5月のSkyRKBレディスの11位だった。この日、スタート時は首位と4打差の6位。「目標は初のトップ10でした」。無欲の快進撃で首位を独走。
「15番で、初めてリーダーボードを見ました。良い位置にはいるだろうな、と思っていましたけど(その時点で)5打差で首位と知って…。残り3ホール、大たたきをしなければ勝てる、と思いました。ショットには影響はなかったですけど、パットは手が震え始めました」と正直に話す。
初優勝へ試練が訪れたが、5打の大差に守られ、しっかり勝ち切った。
開幕戦のダイキンオーキッドでは第2日を終えて首位。第3日を最終組で回った。しかし、78と大きく崩れた。「あの時、私はまだ最終組でプレーする人間ではない、と思い知りました」と振り返る。
それから、わずか3か月。20歳は技術もメンタルも急成長した。
「こんなにパットが入ったことはありません。今まで結果を気にしすぎていたけど、構えたところから打ち出すことだけを意識しました」と話す。
23年に埼玉栄高を卒業後、日大に進学したが、昨年8月、2年で中退。朝から晩までゴルフだけを考えるプロ生活を続けている。ツアーに帯同する母・英姫(えいひ)さん(48)は「ボールが見えなくなるほど真っ暗になるまで練習することもありました」と明かす。神がかったパットは、練習による裏付けがあった。
埼玉栄高出身で、岩井明愛、千怜姉妹(ともにホンダ)の2学年後輩。「高校1年の時、明愛さん、千怜と私の3人でプレーした。レベルが全く違いました。目標にもなりませんでした。『こういう選手がプロで活躍するんだろうな』と思いました」と振り返る。
プロ初勝利を挙げた今も「岩井さんは近い存在には思えません」と謙虚に話す。
先週の稲垣那奈子(三菱電機)に続き、23年プロテスト合格組が優勝。日本女子ツアーに、また、新ヒロインが誕生した。
◆高野 愛姫(たかの・あいひ)2004年9月14日、東京・北区生まれ。20歳。5歳からゴルフを始める。18年、北区立飛鳥中学校2年時に大東建託いい部屋ネットレディスでツアー初出場(111位予選落ち)。20年、埼玉栄高に進学。