英国の世界的ソプラノ歌手サラ・ブライトマン(64)が、25日に9年ぶりのベストアルバム「スターライト・シンフォニー―ベスト・コレクション」を発売し、7月3日のパシフィコ横浜国立大ホールから3年ぶり11回目の単独来日公演(6都市8公演)を開催する。人気曲を詰め込んだツアーで、今回を区切りにしばらく「こういったコンサート活動からは離れる」と明かしている。
ステージ上の壮大なパフォーマンスとは異なり、気さくに取材に応じるサラは、穏やかそのものだった。全世界3500万枚超のアルバムセールスを誇る伝説的ソプラノだが、地声は高低も大小も普通。身ぶり手ぶりを交え、真っすぐと目を見て言葉を届ける姿勢が印象的で、外見も言語も違うが、親しみを感じる。まるで日本人と話しているようだった。
「私もすごく日本を親密に思っている。80年代頭に日本に来たときからそう感じているわ。外観、感覚、文化的なもの、島国―。祖国(英国)と似たところがたくさんある。来日は京都が一番最初だったけど、そのときから祖国を除けば、日本が一番好きな国かな」
どこか日本らしさがあるが、端的に言葉では言い表せない。雰囲気から日本らしさがにじみ出ていた。それはサラ自身も感じ取っているようだ。
「歴史の深みや、バランス感覚を日本人はすごく重んじている。私の国もそうだと思う。ひとつには教育がしっかりして、きちんといろんなことを知っている。それは伝統を踏まえていることにつながると思う。テクノロジーに優れた先進的な国だけど、先人の思いも重んじている。そういう人たちが多くいる国だから、私が日本に来ると、すごくアットホームに感じるわ」
過去にはNHK紅白歌合戦への3回の出演や、NHKドラマ「坂の上の雲」のメインテーマ「Stand Alone」を担当するなど日本でもファンが多い。
「おばあちゃん、お母さん、子どもの3世代でコンサートに来てくれたりする。あまりにも若い人が来るから、びっくりして。なぜかと聞いたら、私の曲を聴かされて育てられたと。若い日本のファンは、歌詞まで知ってくれている」
81年に大物作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバー(77)が新作として送り出したミュージカル「キャッツ」で見いだされた。86年の「オペラ座の怪人」でクリスティーヌ・ダーエ役を演じ、一気にスターダムに上り詰めた。
映画「アマルフィ 女神の報酬」(2009年)の主題歌にもなった「タイム・トゥ―」は、発売から約30年たっても聴き続けられている。自身の代表曲に「自分でもすばらしい曲だと思う。良い曲はエバーグリーン。色あせない。いつまでも残り続ける」とうなずきつつ、思い入れに関しては言葉少な。「私の人生のある一部分を象徴する曲。でも、それ以上は話せないわ」と物憂げに答えた。
今回のアルバムとツアーについて、「まさに全曲が見どころで聴きどころ。アルバムとツアーに集められた曲の一つ一つが、私自身の人生を映し出している。
サラはまた、「自分の人気曲だけを集めたライブはしばらくはやらない。人気曲に新曲を合わせたライブはやると思いますが、自身の歴史を振り返るような公演は最後」と言い切った。
「実は今、新しい音楽をやろうとしてるの。実は前々から取り組んでいたけど、ここ1年はミュージカルに集中していて、新しいことに取り組む時間がなくて。今回のツアー以降は、またその新しい試みに戻るわ」
その試みとは―。「本当にあまり言えないの」と口にチャックをするジェスチャーで笑うと、「新しい物語を伝えることになるかな。ライブも、アルバムも、新たな試みも、とにかく楽しみにして。今後、日本に戻ってこないということではない。でも、そのときは違う形かも。“今のサラ・ブライトマン”はこれで終わり」と明かした。
◆サラ・ブライトマン(Sarah Brightman)1960年8月14日、英国出身。64歳。「オペラ座の怪人」などのミュージカルに主演。その後ソロデビュー。2003年の「ハレム」で史上初のビルボード誌のダンスチャート、クラシックチャート同時1位を獲得。バルセロナ五輪、北京五輪で公式テーマ曲を歌唱した。YOSHIKIとも共演している。
◆サラ・ブライトマンのツアー日程
▼7月3日 パシフィコ横浜
▼5、6日 東京国際フォーラム・ホールA
▼7日 仙台サンプラザホール
▼9、10日 グランキューブ大阪
▼12日 ロームシアター京都
▼14日 福岡サンパレス・ホテル&ホール