女子プロサッカーWEリーグのINAC神戸で、初の女性監督が誕生した。8月に開幕する2025―26年シーズンを率いるのは、現役時に女子日本代表「なでしこジャパン」初のママさん選手として活躍した宮本ともみ監督(46)。

このほど神戸市内で就任会見を行った新指揮官は、選手時代に結婚、出産した経験も生かしながら、リーグ初年度21―22年以来、4季ぶりのV奪回を目指す。(取材、構成=森脇 瑠香)

 宮本監督の目は輝いていた。12年に現役引退後は、なでしこジャパンのコーチなどを務め、ようやくプロクラブ監督就任の夢をかなえた。

 「INAC神戸は、女子サッカーの中ではトップオブトップで強豪と言われるチーム。プレッシャーがないと言えばウソ。チャンスをいただけて感謝の気持ちでいっぱいです」

 現役時はW杯に3度、五輪に1度出場。代表通算77試合13得点と結果を残した。02年に結婚、05年に長男を出産。翌06年には、なでしこジャパン初のママさん選手として代表復帰した。代表合宿に当時1歳の長男を帯同し、日本協会が特例でベビーシッターを用意したこともあった。引退後、コーチ時代には数々、選手のプライベートな相談にも乗ってきたという。

 「選手としてやってきたことは一つの強み。

同性として理解できる部分は多くあるし、選手と近い立場で、指導者として関わる意識をしてきた。これまで代表の選手にも(結婚、出産について)聞いてくる選手もいた。INAC神戸でも私の経験が役に立つなら、協力できる部分はある」

 宮本監督の励みは、離れて暮らす大学生の長男だ。選手として、指導者として、真剣に女子サッカーと向き合う母親の背中を見せた。

 「監督就任への話をいただいた時も、決まった時も息子に話した。チーム名を聞いて、びっくりしていた(笑)。自分も大学生活を頑張ると言ってくれて、そこが一番うれしかった」

 「ママさん監督」は3季連続リーグ2位のINAC神戸をV奪回へ、けん引する。追い求めるサッカーは、はっきりしている。

 「一番大事にしているのはサッカーをもっと盛り上げたい、恩返しをしたい。INAC神戸をもっと強くして、ファンを増やしたい。サッカーを見に来る人は得点を見たくて来ている。得点をたくさん取るところに、こだわってやっていきたい」

 宮本INACは23日に始動。

8月10日の開幕節では、昨季同じ勝ち点ながら得失点差で優勝を明け渡したリーグ王者・日テレ東京V戦(神戸ユニバ)に挑む。

 ◆宮本 ともみ(みやもと・ともみ)1978年12月31日、神奈川・相模原市生まれ。46歳。旧姓・三井。現役時はMF。高校卒業後、97年にプリマハム(現伊賀FCくノ一三重)加入。同年、なでしこジャパン初選出。99、03、07年W杯、04年アテネ五輪出場。12年に現役引退後、年代別の女子日本代表監督を歴任。21~24年、なでしこジャパンコーチ。

 ◆WEリーグの女性監督 リーグ初年度の21―22年、ちふれ埼玉の半田悦子監督が参入11クラブで唯一の女性監督として参戦も最下位。22―23年、ちふれ埼玉の田辺友恵監督は成績不振でシーズン途中辞任。

大宮の柳井里奈監督は23―24、24―25年と指揮して7、11位。現在12チーム中で女性監督は柳井監督、宮本監督の2人。

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