新日本プロレスは23日、都内のホテルで緊急記者会見し柔道男子100キロ級で2021年東京五輪金メダルのウルフ・アロン(29)の新入団を発表した。日本人五輪金メダリストのプロレス転向は史上初となる。
記者、カメラマン100人あまりが詰めかけた会見にはウルフ、新日本の棚橋弘至社長、団体オーナーでブシロード代表取締役の木谷高明氏が登壇した。新日本プロレスはウルフと6月23日付で契約。会見で契約書にサインした。入団の経緯を棚橋社長は「ウルフ選手から入団の強い希望をいただきました」と明かしデビュー戦は来年1・4東京ドームになることを発表した。
会見でウルフは「新たな舞台にチャレンジできることに喜びを感じています」と話した。入団を自らが希望したことに「プロレスが好きだからです」と告白した。会見でウルフは「新たな舞台にチャレンジできることに喜びを感じています」と話した。
ウルフは「大学生のころ見ていたワールドプロレスリングをずっと見てきた。プロレスをやるんだったら新日本しかない」と明かした。しかし、2021年東京五輪での金メダルが柔道家として最大の目標だったため「その気持ちはいったんしまっていた」と明かし、パリ五輪後にプロレス転向を決意し自ら新日本プロレス入りを打診した。
今月から野毛道場で本格的に練習をスタートしている。「柔道家のクセが抜け切れていないので難航しているが、1日1日の成長がうれしい」と明かした。
東京五輪で金メダルのウルフは、内股、大内刈りや“ウルフ・タイム”と称された抜群のスタミナを武器に17年世界選手権、19年全日本選手権、21年東京五輪を制し、男子で史上8人目の「柔道3冠」を達成した。
2024年パリ五輪後の昨年9月に現役を退く意向を表明。今月8日の全日本実業団体対抗大会を最後の試合となった。今月10日に都内で引退会見を行い現役生活を「悔いは全くない」と振り返り、今後について「自分自身が表に立ちたい気持ちが強い」と明かしていた。
過去にプロレスへ転向した主な大物柔道家は、以下の通り。
▼1965年全日本選手権の覇者だった坂口征二氏(現・新日本プロレス相談役)が67年に日本プロレスに入団。
▼64年東京五輪「無差別級」で金メダルを獲得したオランダ人のアントン・ヘーシンクが73年に全日本プロレスと契約。
▼72年ミュンヘン五輪「93キロ超級」と「無差別級」2階級で金メダルを獲得したオランダ人のウィレム・ルスカが76年に新日本プロレスと契約。
▼92年バルセロナ五輪「95キロ超級」銀メダルの小川直也が97年に新日本プロレスと契約。
また五輪に出場しプロレス入りした日本人アスリートでは、レスリング代表でマサ斎藤さん(1964年東京大会)、ジャンボ鶴田さん、長州力(共に72年ミュンヘン大会)、谷津嘉章(76年モントリオール大会)、馳浩氏(84年ロス大会)、本田多聞さん(84年ロス、88年ソウル、92年バルセロナ大会)、中西学さん(92年バルセロナ大会)らがいるが、いずれもメダルは獲得できなかった。
海外では、金メダルを獲得したアスリートのプロレス転向は、98年に96年アトランタ五輪で男子レスリングのフリースタイル男子100キロ級で金メダルを獲得した米国のカート・アングルがWWF(現WWE)と契約。2021年東京五輪レスリング女子68キロ級金メダルの米国のタミラマリアナ・ストックメンサが2023年5月にWWEに入団した例などがある。
こうした過去の事例からあらゆる競技を通じて日本人五輪金メダリストのプロレスラー転向は、ウルフが史上初となる。
◆ウルフ・アロン 1996年2月24日、東京・葛飾区生まれ。29歳。6歳から春日柔道クラブで競技を始め、東海大浦安高2年時に高校3冠。東海大を経て、18年4月から了徳寺大職、23年4年からパーク24所属。世界選手権は17年初優勝。19年3位。左組み。得意技は大内刈り、内股。身長181センチ。