馬トク報知は今年も現場記者が深掘りする「夏の自由研究」を随時掲載する。初回は「秋への飛躍」をテーマに、矢作芳人調教師(64)=栗東=をヤマタケ(山本武志)記者が直撃。

今春“世界ランク1位”となったフォーエバーヤング、コントレイル産駒への期待、さらに今後への思いを語り尽くした。

 ―まずは2月のサウジC。フォーエバーヤングでパンサラッサ以来、2度目の勝利を挙げた。同馬はロンジンワールドベストホースランキングでも1位となった。

 「ファンの方と同じように感動しました。負けたと思った。あの形で勝つのは本当にすごい。ましてや、相手がロマンチックウォリアー。価値の高いレースでした」

 ―所属の坂井(瑠星)騎手と海外G1初制覇だった。

 「それは重賞を勝っていたし、特別な感情はなかったかな。もっと引き出しはつくれると思うけど、騎手としてはかなりのクラスまで来たと思います。肝も据わってるよ。

ケンタッキーダービーやブリーダーズカップ(BC)のパドックで『よくここまで来たな』と声をかけると、『先生、ドバイの時も言ってましたよ』と言われてね。緊張感を出さないし、世代の差を感じるよな(笑)」

 ―ドバイ・ワールドCは発走前に尿検査で閉じ込められるなどアクシデントに見舞われた(注)。

 「当然、不安や心配があったんだけど、『それでも』という気持ちもありました。ただ、ゲートを出た時点でサウジとは違っていましたからね。普通なら惨敗のレース。よく3着まで差を詰めた、と改めて能力を感じました」

 ―その後に、アクシデントについて主催者に質問及び要望書を送り、その回答書もXで公開した。

 「正直、個人としては何の得にもなりません。ただ、来年以降の日本馬に対し、繰り返してほしくなかった。日本競馬を引っ張っているという自負はあるので、その部分での矜持(きょうじ)というか、責任感が強かったね。もう一つは(JRAで)馬券を売っているレースということ。1番人気を管理する人間として、説明責任があるという意識は強かった」

 ―来年も目標になる?

 「ドバイの前から、来年はサウジの連覇を狙ってからドバイへという話でした。そこに“宿題”が残ったからね。

その思いは強くなりました」

 ―今秋のプランを改めて。

 「日本テレビ盃(10月1日、船橋)からBCクラシック(11月1日、デルマー)を目指します。BCは2つ勝っているけど、今度はクラシックを勝ちに、これだけの馬で行けるというのはね。何とかしたい」

 ―その後に考えていることは。

 「ひとつファンに伝えたいのは、絶対にどこかで芝を使います。オーナーとも話をしていますし、できれば日本のどこかでと考えています」 

 (注) レース前に抜き打ちの採尿検査を行うため、30分ほど個室に入ることに。装鞍所へ行く準備時間も短くなるなどの影響で、非常にイレ込んだ状態でレースに臨むことになった。

 ◆矢作 芳人(やはぎ・よしと)1961年3月20日、東京都生まれ。64歳。05年3月に厩舎を開業。14、16、20、21、22年に最多勝利調教師、19~23年に最多賞金獲得調教師に輝く。JRA通算916勝。

今年は現在20勝。重賞はG114勝を含む59勝。海外ではG19勝を含む重賞16勝を挙げる。日本人調教師として、初めてブリーダーズC(21年フィリー&メアターフ=ラヴズオンリーユー、ディスタフ=マルシュロレーヌ)、サウジCを制した。

 【25年上半期のフォーエバーヤング激戦VTR】 ◇サウジC 大外の14番ゲートから先頭集団でレースを進め、直線では芝でG110勝の香港最強馬ロマンチックウォリアーとのマッチレースに。一度は2馬身ほどのリードを許すも、ゴール前で差し切り。世界最高の1着賞金1000万ドル(約15億7024万円)を獲得した。 ◇ドバイ・ワールドC 日本で発売された馬券は単勝1.1倍の断然人気。レースは好位をとったものの、進みがいまひとつで鞍上の坂井の手は動きっぱなし。直線残り200メートルから加速したが、上位2頭に届かず3着だった。

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