◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
競馬記者を合計12年半やってきて、騎乗者にとって腰痛は職業病だと聞いてきた。栗東トレーニングセンター(滋賀県)の厩(きゅう)務員を例にとると、担当馬は2頭。
そんななか、人にも馬にも優しい馬具を見つけた。調教中、鞍と馬の背中の間に挟み鞍傷(あんしょう)や皮膚病を防ぐのに大切な役割を果たす鞍下(くらした)。これまではスポンジ生地など、あまりクッションのきかない素材が一般的だったが、2年前に発売された「エアーライダー」は、高反発マットレスにも使われる体圧分散に優れた素材が採用されている。
寝具メーカーのTTS(大阪市中央区)が、牧場で競走馬の調教に騎乗する知人から相談を受けたことが発端だった。担当者によると、昨今のアスリートは睡眠を重視し、体のケアに重点を置いた枕や敷布団を多く取り扱っているが、それらが騎乗者や、その負荷がかかる馬にも有効ではないかと、使用者と意見交換しながら開発したという。
騎乗者からは「腰や痔(じ)が楽になった」「馬の上より高級座布団に乗っている感じ」などの声も。65歳定年を前に体を痛めて早期退職する厩務員も増えていて、専門色の強い世界だけにもったいないなぁとも思う。今回の馬具もひとつのきっかけに、一人でも多く健康でハッピーに仕事をして、一日でも長く現役で活躍してほしいと願う。(中央競馬担当・玉木 宏征)
◆玉木 宏征(たまき・ひろゆき)東日本の競馬専門紙、ワインの営業マンなどを経て19年に入社し、中央競馬を担当。