早くもパンダロス―。和歌山・白浜町のテーマパーク「アドベンチャーワールド」が飼育しているジャイアントパンダ(以下・パンダ)は、27日が最後の一般公開日となる。
取材日は平日にもかかわらず、観覧施設に長蛇の列ができていた。5月26日から隔離検疫中かつ、夏場は屋外展示を実施しないため、ガラス越しではあったものの、駆けつけたファンは推しの姿を目に焼けつけていた。
和歌山県の40歳男性・NoGさんは、SNSに投稿したパンダの写真が好評を博したことがきっかけで、本業の福祉関係に加え、写真家としても活躍。「もしウチにパンダが来たら…という想定で、パンダ団子(米粉やトウモロコシの粉を蒸した副食)を作りました。全然おいしくなかったです。竹はさすがに食べませんが、もう変態ですね」と頭をかいた。だが、ふとした時、寂しさにとらわれる。「いなくなることは、なるべく考えないようにしています」と目を伏せた。
東京在住の50代女性・治子さんは、返還報道を見て「いてもたってもいられなくて」と8日に和歌山入り。28日まで20連泊する予定だという。
楓浜と同じ4歳の娘がいる飼育スタッフの新谷希未代さん(43)は00年に園内の教育機関「AWS動物学院」に入学。同年にアドベンチャーワールドで生まれた楓浜らの母・良浜と“同期生”だ。「良浜ってすごく心配するし、見守るところは見守る。一緒に遊ぶのも一生懸命。
スタッフとして返還を前向きに捉えている。「パンダたちの未来を考えますと、高齢に差しかかっている良浜にとって、医療が整っている中国は何かあったときも安心。楓浜も性成熟の4歳。パートナーを見つけてくれれば」。ただ本音は少し違う。「寂しいです。やはりパンダが戻ってくることを望みます」とポツリ。「楓浜が子供を抱く姿を想像してはいますけどね」と悲しそうに笑った。
記者まで寂しくなってしまった。うつむきながら帰路に就こうとすると、広報スタッフの香月麻美さんが背中越しに声をかけてくれた。「きっとパンダ、帰ってきますから!」。
国内上野の2頭だけに 〇…白浜のパンダが返還されると、国内のパンダは上野動物園(東京・台東区)のシャオシャオ(雄、4歳)、レイレイ(雌、4歳)の双子2頭のみとなる。この2頭の所有権も中国にあり、都と中国野生動物保護協会との協定で来年2月20日が返還期限となっている。実際にいつ返還するかは未定で、白浜の4頭の場合は、猛暑を避けるため、8月末の期限を繰り上げた経緯がある。
グッズ大人気 〇…アドベンチャーワールドではパンダグッズが飛ぶように売れている。「旅立ちグッズ」各種は転売対策のため「おひとり1点限り」。香月さんは「最後の記念にと、たくさんお求めいただいており、一部品切れになった商品もあります」という。一方で7月以降に展開する新商品も考案中。楓浜のアイラインを外側に跳ね上げたようなアイパッチ(目の模様)など、4頭の特徴を反映させたグッズを、返還後に販売予定だ。