◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

そのプレーに、魂を感じずにはいられない。G大阪で、17季目のシーズンを送るMF倉田秋(36)だ。

ピッチ上で誰より激しく、泥臭いその姿から、生きざまが伝わってくる。

 2007年にプロデビューし、J1出場試合は400試合以上。22年には主将も務めるなど、その19年間の歩みは、たやすく想像できるものではない。その中で、あれだけ遮二無二ボールを追い続けられる理由を聞いてみた。闘争心か、献身性か。そんな返答を予想したが「ああやってぐちゃぐちゃになりながら、やってんのが好きやねん。きれいにっていうのはあるかもしれんけど、結局全部出して勝った試合の方が記憶に残ってる」と笑いながら、シンプルな答えが返ってきた。

 クラブのシンボル的存在なだけに、チーム内で意識する役割などで背負うものがあるのかと思っていた。しかし「役割なんかそんな考えない。できることは決まってるから、できることをやる。それだけ。自分がやるべきことやればついてきてくれる」と、とらわれることなく自分を表現し続けていることを知った。

 サッカー人生で一貫してきたのは「楽しむ」ことだという。その大切さは、自身が開校するフットボールアカデミー「Dieci(ディエチ)」の子どもたちにも伝えている。「『全力を出すことを楽しめ』と。サッカーでも、勉強でも、遊びでも。恥ずかしさも多分出てくるけど、全力でやったらなんでも、おもろい」。簡単なようで薄れがちな、人生において大事なこと。何歳になっても汗をかけるか、なりふり構わず泥臭く生きられるか。その姿こそ美しいのだと、男・倉田秋の背中から学ぶ。(サッカー担当・森口 登生)

 ◆森口 登生(もりぐち・とうい)24年入社。マイブームは最近始めたゴルフ。ティーショットを安定させたい。

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