俳優の寛一郎が出演する河瀬直美監督の最新作映画「たしかにあった幻」が2026年2月に全国公開されることが5日、発表された。
同作はスイスで開催される第78回ロカルノ国際映画祭(6日~16日)のインターナショナル・コンペティション部門にクロージング作品として正式招待される。
小児臓器移植実施施設を舞台に、命のともしびを照らす「愛」の物語。フランスからやってきたレシピエント(臓器提供者)移植コーディネーター・コリーが、脳死ドナーの家族や臓器提供を待つ少年少女とその家族と関わりながら、命の尊さと向き合う。同時に、突然失踪した恋人の行方を追うコリーの姿を通じて、愛と喪失、希望を描く。
撮影期間は24年6~11月。兵庫、大阪、奈良、岐阜、屋久島、パリとロケーションを転々としながら実施された。小児臓器移植に携わる実際の医療関係者たちが、現在の日本が抱える臓器移植の問題点をディスカッションするシーンや、移植手術シーンなどはドキュメントとして撮影され、それをドラマの中に巧みに取り込むことによって物語にリアリティと臨場感を持たせている。
主人公・コリーを演じるのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督の「ファントム・スレッド」(2017)への出演をきっかけに国際的な名声を獲得したルクセンブルクの俳優ヴィッキー・クリープス。寛一郎はコリーの恋人であり、突然失踪する迅を演じる。寛一郎は「諸行無常。何かこの作品に込められたテーマのような気がしています。この作品は自分にとって挑戦でした。
河瀬監督は「この度、映画を本当に愛してやまないロカルノ国際映画祭の選考委員の皆様に本年度のコンペ部門のクロージングフィルムに選んでいただきましたことを大変光栄に思います。思い返せば、2000年公開の『火垂』がロカルノで受賞したことは私にとってとても美しい忘れられない想い出です。25年の月日を経て、またロカルノに戻って来れたことに感謝しています」と映画祭への選出を感謝した。