女優の麻生久美子(47)が1995年の映画デビュー以来、30年の節目を迎えた。着実にキャリアを重ねて「今が一番、幸せ」と充実感を漂わせる。
キラキラと輝く女優オーラとは違う、人懐っこいほほ笑み。麻生は同窓会で再会した幼なじみのように、親しみやすい笑顔で取材に応じた。記者が過去の出演作の感想を伝えると「そうそうそう、そうなんです~」と目を細め、懐の深さを感じさせた。
細かいことにこだわらない性格で、泰然自若という言葉が似合う。それが長く活躍を続けられる要因だ。「理想の役者像とか、ないんです。ちょっと雑な言い方になっちゃうけど、何でもいいと思っている。基本的にずーっと受け身で、やっています」。ドラマや映画の現場でも「自分から監督さんに質問はしないですね。言われたことを頑張るだけ。
40代後半となり、人生を見つめ直すようになった。「今が十分に幸せで、恵まれている。好きな人たちと一緒に楽しくいられたら、それだけで幸せ。将来のことは深く考えず、『なるようになれ』と思います」。10代、20代の若手との共演でジェネレーションギャップを感じることもあるが、「面白いくらいに違う世代ですよね。体形も全然違う。いろいろ思った時もありましたけど、違いを受け入れてから、生きやすくなってきました」。力みすぎず、ゆる~い自然体の姿勢が魅力だ。
幼い頃は歌手志望だった。「幼稚園の頃から西田ひかるさん、チェッカーズさん、光GENJIさんに憧れて、アイドル歌手になりたいと思っていました。生まれ育ったのが自然豊かな場所で、気軽に映画館に行ける状況ではなくて、初めて映画館で見た映画は11歳の時、丹波哲郎さんの『大霊界』でした」
95年に俳優の哀川翔(64)が、あいかわ翔名義で監督した「BAD GUY BEACH」で映画デビュー。
その後、女優として仕事が軌道に乗っても自分の演技に自信を持てずに思い悩み、壁にぶち当たった。転機になったのは、オダギリジョー(49)と共演したテレ朝系ドラマ「時効警察」だ。「コメディーに本格的に挑戦して、視野が広がった。『時効警察』と出会ったことで女優人生が変わりました」と愛着を語る。
07年にスタイリストの伊賀大介氏(48)と結婚。2児の母として家事・育児と仕事を両立させている。「明るい親でありたいと思うけど、子供が約束を破ったり、危ないことをしたら、怒ることもあります。親になって『自分も怒ることがあるんだな』って気付きました。
「おむすび」では、橋本演じる主人公・米田結の母・愛子役を好演した。予想以上に反響が大きく「朝ドラのお母さん役は特別ですよね。いろんな現場で『見てますよ』と声を掛けていただきました」。橋本とも打ち解け、「みんなを引っ張る座長。すごくかっこいい。私より頼りになるし、しっかりしている」。平成のギャル文化を描いた物語で「私も10代の頃にギャルをやっておけば良かったな」と後悔したという。
取材では「今後、どんな役をやりたいですか?」というのが定番の質問だ。「聞かれたら『医者かな』とか、答えているけど、昔から特にないです。
ほのぼのとした世界観が魅力の「海辺へ―」で横浜監督と3度目のタッグを組んだ。「横浜監督は天才です。演出で魔法にかけられる。日常の延長のように芝居が始まっていく。演出される時の言葉のチョイスが心に刺さるんですよね。意外な角度から見ているから役者としてはハッとさせられるし、ワクワクする」
主人公の奏介(原田琥之佑)と一緒に暮らす親戚の寿美子役。「謎めいた女性で、どう捉えればいいのか難しかった」。完成した作品は試写室でチェックして「声を出して笑いました。ユーモアがあって、エッジが利いている。
◆麻生 久美子(あそう・くみこ)1978年6月17日、千葉県生まれ。47歳。95年に「BAD GUY BEACH」で映画デビュー。98年に今村昌平監督の映画「カンゾー先生」で注目され、報知映画賞助演女優賞。2007年に映画「夕凪の街 桜の国」で報知映画賞主演女優賞。主な出演作は11年の映画「モテキ」、19年の「翔んで埼玉」、23年の「高野豆腐店の春」など。身長162センチ。