歌手で俳優の杉良太郎(81)が27日、原爆の爆心地に近い長崎市の平和公園を訪れ、犠牲者を慰霊した。強烈な日差しが降り注ぐ中、平和祈念像を前に花を手向け、静かに祈りをささげた。
「(戦後)80年の重みを感じますね。罪のない人が被爆し苦しんできた。世界各国では今も市民が(戦争の)犠牲になっている。平和のために、自分に何ができたのか…」と神妙。「今の日本の日常は幸せだと思う。その日常を地獄のようなものに変えてしまっていいのか?ということ。戦争を知らない、戦争を体験していない、戦争を理解できない若者たちが増えていくのは非常に危険なこと。だから、今の大人がしっかりと伝えていかなきゃいけない。自分が生きている限り(平和のために)戦っていく」と決意を新たにした。
平和公園に足を運んだのは55年ぶりだった。1970年、特攻隊員の青年を演じた主演映画「花の特攻隊 あゝ戦友よ」(森永健次郎監督)のPRのため、慰問を兼ねて原作者・川内康範さんらと訪問。大浦天主堂の近くの建物で昼食をした際、同年代の女性が食事を提供してくれたが、半世紀以上、心残りを抱えてきた。
何の気なしに聞いた「結婚していますか?」。その女性に隣の部屋に呼ばれると、着物の裾から見せられたのは足のケロイドだった。「これだから結婚できないの」という言葉に、どうすることもできなかった。
「いまだに耳に残っている。自分は無言で部屋を出てきてしまった。被爆者にしか分からない苦しみがある。お元気なら、ひと目会いたい。無礼な質問をしたことをわびたいね」
今年3月、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の機関紙に「さがしています」という題名の文章を掲載。当時の記憶を頼りに、4月に現地で探したが、手がかりは得られなかった。
「毎年8月に式典を見ていると、この出来事を思い出す。この先も、ずっと女性を探して続けていくでしょうね」と杉。女性に対する悔恨を胸に、平和への取り組みを続けていく。
○…杉は、警察庁特別防犯対策監として市内の大浦警察署を訪れた。全国160か所目となる警察署の訪問。長崎が発祥の食事宅配事業「ワタミの宅食」と、特殊詐欺防止活動に関する協力を宣言した。杉は「地元に根付いた人(や企業)が戸別に回ってくれたら、訪問先が安心するので大変心強い。この輪が広がり、全国に普及していけば」。特殊詐欺の撲滅に向けて「生半可な気持ちではできない。命懸けです」と語った。