サッカーでは欧州各国の移籍市場が、9月1日に閉幕する。今夏も多くの日本人選手が新天地を求め、日本から、そして欧州内での移籍を選んだ。
日本人の穴を、日本人で埋める―。そんな動きが、今夏の欧州クラブで起こった。日本代表MF堂安律(27)が、ドイツ1部フライブルクからフランクフルトへ移籍。そしてフライブルクは、デンマーク1部ブレンビーからMF鈴木唯人(23)を獲得した。さらに鈴木を放出したブレンビーは、湘南からFW福田翔生(24)、筑波大からFW内野航太郎(21)を加えた。
昨季フライブルクで10ゴールを挙げ、約35億円とも言われる移籍金でフランクフルトへステップアップした堂安。22年にオランダ1部PSVからフライブルクに加入した際の移籍金は約17億円で、クラブに大きな利益をもたらしただけでなく、日本人選手の評価も高めた。守備の規律に厳しいフライブルクのシュトライヒ前監督は、堂安について「勤勉で、知識欲があり、アドバイスにも素直に耳を傾ける。彼は毎日そういう選手だ」と称賛していた。
鈴木のフライブルク移籍は、日本人選手にとって新たなステップアップの道を示すものとなるかもしれない。デンマーク1部で11度のリーグ優勝を誇るブレンビーで前季に12ゴールを挙げ、5大リーグの一角であるドイツへと移籍。これまでの日本人選手は、オランダやベルギーを経て5大リーグを目指すルートが主流だったが、鈴木は北欧の強豪クラブで結果を残し、ステップアップのチャンスをつかんだ。
欧州サッカーに精通する関係者は「(鈴木が)デンマークリーグで、これまで縁の薄かった日本人選手への評価を高めたのは間違いない。戦術理解や献身性、チームへの融和といった日本人の特長は、情報として聞くのと実際に体感するのとでは大きな違いがある」と語る。その結果、ブレンビーは福田、内野という2人の日本人選手を続けて獲得。同じくデンマークの名門・コペンハーゲンには、湘南からDF鈴木淳之介(22)が新加入した。北欧や東欧を欧州移籍の第一歩にする動きも、活発化しつつある。
現在、多くの日本人選手が欧州を舞台に戦っている。人気、実力、資金面でも“プレミアリーグの一強時代”と言われ、川崎からトットナムに約10億円の移籍金で加入したDF高井幸大(20)は、Jリーグ全体に夢を与えた。
先駆者たちが日本人の価値を示し、複数の道が開かれた。今後は、よりその価値に見合った移籍金がJリーグクラブに入る流れができれば、日本サッカーの発展にもさらにつながっていくはずだ。
◆今夏の移籍市場解析
▽移籍金 DF高井幸大(川崎→トットナム)が500万ポンド(約10億円)で移籍したと伝えられており、Jクラブから直接欧州入りした選手の中で歴代最高額となった。
一方、ベルギーやスコットランド、5大リーグ2部クラブなどへの移籍に関しては、1億円に満たない額での渡欧となるケースも多い。またJリーグは26年から秋春制に移行することが決まっており、夏の移籍において、契約満了後の移籍となる“ゼロ円移籍”が多発するリスクがある。Jクラブは対応が求められる。
▽年齢 今夏にJ1から渡欧した選手では、FW山田新(川崎→セルティック)の25歳が最高齢(移籍発表時)。20歳の高井、21歳のMF北野颯太(C大阪→ザルツブルク)らパリ五輪世代の選手が中心で、大卒加入から在籍半年でDF稲村隼翔(新潟→セルティック)が引き抜かれる事例もあった。
また近年は、過去に海外移籍を望みながらも果たせなかったベテラン選手が、オーストラリアなどに新天地を求める事例も増えてきている。
▽人気ポジション かつては渡欧事例が少なかったセンターバックにおいて、高井、稲村、綱島悠斗(東京V→アントワープ)、鈴木淳之介(湘南→コペンハーゲン)、木村誠二(FC東京→ウェステルロー)らが続々と移籍を果たした。
日本人DFのフィジカル面での成長や、パス能力の高いDFの需要が高まっていることが背景とみられる。