4日に肺炎のため死去した歌手の橋幸夫(はし・ゆきお、本名・橋幸男=ゆきお)さんの通夜が9日、東京・文京区の無量山傳通院で営まれ、ゆかりの歌手、俳優や芸能関係者ら700人が参列した。
橋さん、西郷輝彦さん(22年死去、享年75)と昭和の青春歌謡を支え、「御三家」と呼ばれた歌手の舟木一夫も参列。
デビュー直後は、3人それぞれ目が回るような忙しさだった。「御三家」も全盛期は「年に2、3回しか顔を合わせることはなかった」という。「偉大な先輩だった。個性あふれる歌声で、丁寧に歌うことを自分に課していらっしゃった」と回想する。ふと思い浮かぶのはステージ前に歯を磨く姿。几帳面な背中が目に焼き付いている。
最後にあったのは「引退会見の2年ほど前」。声の衰えを理由に一時は引退宣言し、翌年に撤回した橋さんに「声を痛めているのを、映像で歌を聴いても分かっていたので…」と理解を示す。それでもアルツハイマー型認知症を発症してもなお復帰を決意し、最後までコンサートに立ち続けた姿に「歌い手が歌を完璧に忘れると言うことは死んでも無理でしょう。本能に近いものだと思います」と語った。
橋さんにかけた言葉について尋ねられると「何も…。言いたくない」と言葉少な。「穏やかな顔も見たくないし、『ご苦労さま』も言いたくない」と現実を受け止めきれずにいるようだった。