◆アジア・チャンピオンズリーグエリート ▽第1節 町田1―1FCソウル(16日・町田GIONスタジアム)

 【町田担当・浅岡諒祐】アジアの舞台で戦うとは何かが随所に見られた初陣だった。アジア・チャンピオンズリーグエリート(ACLE)の開幕戦は1―1で引き分け。

黒田剛監督は試合後の会見で「立ち上がりから印象としてはすごく硬いな、と。この大会における初出場のプレッシャーや重圧なのか、そういうのを感じた」と開口一番に述べた。クラブ初の国際大会に挑む心境をありのままに表現していた。

 普段のリーグ戦とは異なる点が多くあった。町田が本拠地とする町田GIONスタジアムはゴール裏に背もたれがなく、アジアサッカー連盟(AFC)の規定で使用不可。そのため、サポーターによる応援はバックスタンド3階で行われた。バックスタンドの1階も背もたれがないため空席に。6000席ほどしか稼働のないスタジアムは、DAZNの中継では無観客と錯覚するほど違和感があった。

 ベンチも普段とは逆サイドのものを利用。スタジアムのスポンサー看板も大会の関係上、黒幕で覆われた。逆に、ピッチの脇にはACLEのスポンサーの看板がずらり。ピッチサイドから近い距離に並べられていた。

町田の十八番であるロングスローを投げる際は、陸上トラックから助走をつけることが多いが、スペースが狭いため助走が多く取れず窮屈な印象を受けた。

 選手の強度もJリーグとは異なる。球際へのアグレシッブな寄せ、元イングランド代表MFジェシー・リンガードを筆頭に推進力のある前線の選手。どれもACLEならではの相手だ。黒田監督が「体の強さ、球際の強さをすごく感じた。もちろんJリーグもそうだが、前の選手に推進力がある選手、パワーを持っている選手、1つのパスで強く仕掛けられる選手が多い」と言えば、海外クラブと初めて対戦したDF林幸多郎は「ちょっと雑でもぐっと来る感じがあった。普通の日本のクラブよりも攻撃をやりきるところが多い。躊躇(ちゅうちょ)することなくクロスを上げてくるし、チームとしてのやり方が違う」と振り返った。

 Jリーグとの違いとして、ボールの感触も選手から挙げられた。大会で使用されるボールは練習で使えるように事前に各クラブに配られるが、多くの選手が実戦での扱いに苦戦。センターバックを務めるDF昌子源から右ウィングバックのDF望月ヘンリー海輝へのサイドチェンジは町田の大きな武器の1つだが、この試合では普段のように通らなかった。

 昌子は今回が6度目のACL出場。

ボールに慣れるため自主練習でもサイドチェンジの練習を重点的に取り組んだというが、それでも「今日はロングボールが有効的に使えなかった。いつもの感覚で蹴ったら、失速してサイドバックの人に行ってしまう。蹴り方を変えてパワーを入れると、アウト回転がかかって戻ってくる」と難しさを感じたという。望月も「思ったよりボールが伸びた。慣れとの乖離(かいり)があった」と明かした。

 各選手がACLE仕様のボールの難しさに言及する中、DF中山雄太は「芝とのかみ合わせが良すぎる。ピッチもぬれていたんですけど、あまり関係なくグリップ力がある。それがやりづらい」とボールの特徴を表現。練習取材の際に一度触る機会があったが、普段のボールよりも手に吸い付くような感覚があった。

 ただ、決して言い訳にはしない。「蹴るときにボールが引っかかることもあるのでは」と中山に問うと「そうです。だから何か…」と一度は言いかけたが「いや、それでもやらなきゃいけない」と訂正。

「そういうアジャスト力をチームとして持っていかないといけない。ちゃんと止めなきゃとか、ちゃんと蹴らなきゃとか、本来それが出来て当然の中で、そこからどうしていくかというレベルに入っていく。それを1回クリアしないといけないと思うので、アジャストしていきたい」と今後の修正を誓った。

 次戦(30日)は敵地(マレーシア)でジョホール・ダルル・タクジムと戦う。クラブとしては初めての海外での試合。今回はホームだったが、不慣れな環境によるストレス、連戦による疲労、思わぬトラブルも次はあるかもしれない。

 ピッチ内外で多くの対応、適応が必要になるかもしれないが、1試合を消化して多くの学びを得た。「次の試合で、今日の試合があったから、と言えるようなものにしていきたい」と中山。この勝ち点1を無駄にせず、敵地でのアジア初白星に備える。

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