元乃木坂46の山崎怜奈(28)がマルチな活躍を見せている。ラジオの帯番組やエッセーの執筆といったレギュラーの仕事以外にも、情報番組のコメンテーターなど、さまざまなフィールドで才能を発揮。

25日には、日々感じたことをつづったエッセー「まっすぐ生きてきましたが」(マガジンハウス)を発売した。エネルギッシュに活動し続ける山崎の生きざまに迫った。(松下 大樹)

 質問に対する豊富な知識量や紡ぎ出す語彙(ごい)力に、頭脳の明晰(めいせき)さがにじみ出る。報道番組では時事問題に鋭く切り込むこともあり、気の強い人という印象を持たれるが、山崎は「全然完璧人間じゃないし、パワーウーマンでもない」とキッパリ。「そう見えるだろうなって自覚はありますけど、ダメな時はダメですよ。落ち込む時もよくあるし、もろい部分と向き合いながらやっている感じです」。笑い声を上げて話す姿は、どこか親しみやすさも抱かせた。

 ラジオパーソナリティー、エッセイスト、コメンテーター…とさまざまな「顔」がある。ラジオのレギュラー番組は3本を抱え、その一つは月~木曜の昼に放送される帯番組。他にも、月に1回のコラム執筆、クイズ番組や情報番組の出演など各所で引っ張りだことなっている。肩書を「タレント」と、ひとくくりにすることもできるが、その枠に当てはめるには惜しい。

 多忙であることは想像に難くないが、最近は「積極的に息を抜くことを作業として挟むようになった」と明かす。

「自分の冠番組だったり現場の座長になる機会が増えたので、そのぶん周りを見て人様に優しさを向けないといけない自覚がある。人に優しくする余裕を持つためには、自分が余裕を持ってないと無理だなと」。取材前後にこれ以上ない丁寧なあいさつを周囲の人と交わす様子を見ると、その言葉にも説得力がある。

 もともと、乃木坂46のオーディションに応募したのは母だった。アイドルになるつもりはなかったが、小学生時代の子役の経験から「オーディションを100回受けて、1個も受からないこともざら。落ちてしまった人もいるのに、辞退する資格はないなと。何も成し遂げずにやめるのは不誠実」という理由で加入した。

 乃木坂46には約9年間在籍。高校1年生だった2013年にデビューし、同グループのメンバーとして初めて在籍中に大学受験から入学、卒業までを成し遂げた。強い信念でアイドル活動と学業を両立させた。

 「勉強をするのが好きだったことが一番大きい。忙しいからといって『学ぶことが好き』というアイデンティティーを捨てたら(自分自身が)しんどいだけだなと。

自分らしさの一つなので、諦めたくないと思ってがむしゃらに(大学に)行っていました」。深夜から課題に取り組む時もあり「よく現役で入学して、現役で卒業したなという気持ちはあります」と懐かしんだ。

 さまざまな価値観、選択肢を知る上で、大学生活は大きな収穫だった。多様な人生観を持つきっかけにもなった。「この仕事をしているとエンターテインメント業界の人とはたくさん接するけど、それ以外の人を見られない。視野を狭めずにいろいろな可能性が自分にあるんだよ、と思いながら生きられる。肩の荷が下りた感じがありましたね」

 自らの意思ではなかったアイドル業も「乃木坂46に入っていなかったら、もっと神経質で内弁慶だった。握手会で人と話す楽しさを学びました」と感謝。人格形成に好影響があったといい「人の話を聞いたり、楽しくおしゃべりをしたりすることが好きになれたのは乃木坂46のおかげ。物おじしない感じもグループ時代に培われたと思います」。

 22年、25歳になったタイミングで「失敗してもいいから、いろんなことを経験しておきたい」とグループを卒業。「経験することに悪いことはない」という精神で、今日まで幅広いジャンルの仕事に挑戦した。

 今月25日には、アイドル卒業後の日々を記したエッセー「まっすぐ生きてきましたが」を発売した。ウェブサイト「山崎怜奈の言葉のおすそわけ」で連載中の直近2年間のコラムを書籍化し、新たに恋愛などについてつづった書き下ろしも加えた一冊となっている。

 仕事だけでなく、プライベートについても赤裸々にしたためた一冊を手に「うそが下手だからつかないし、良くも悪くも素直なので、それなりに壁にぶつかってきている」と苦笑い。「私みたいな不器用な人がそれなりに壁にぶち当たり、回復を試みた形跡を見て、誰かの絆創膏(ばんそうこう)になればいいなと思います」

 コラムを書籍化した著書は、23年3月にも発売。今作と読み比べると気づきがあった。「自分だけの軸で書いた文章なので、グループ時代に書いたものも含まれた前作に比べると、人間味が増していた。独立してからも頑張って歩んできたんだなと思いますね」と感慨。「仕事だけじゃなくて、ちゃんと生活を大事にしながら日々を紡いでいる足跡がいっぱい残っている」と小さくうなずいた。

 今後の展望が気になってしまうのが記者の性(さが)。それを悟ったのか、山崎は自ら切り出した。

 「『目標はありますか?』ってよく聞かれますけど、正直なくて…」。振り返れば、乃木坂46加入からの12年間、自らの意思でその道を切り開いてきた。

「『無理だ!』と思ってた時も結局なるようになってきたし、その自分には誇りを持っていいと思う。それを糧にやっていくしかないと思っていますね」

 目標はないが、理想の人間像はある。「楽しいことをたくさん見つけられる人間ではいたい。適度にミーハーでありながら、興味のないことでも『一回やってみる』みたいなフットワークの軽さは持っていたい。いろんな経験をしながら、自分の輪郭を太くしていきたいです」

 飽くなき好奇心を携えているからこそ、山崎の可能性は無限に広がっている。

 ◆山崎 怜奈(やまざき・れな)1997年5月21日、東京都出身。28歳。2013年、乃木坂46に2期生として加入。16年慶大入学。20年同大学卒業。22年乃木坂46卒業。レギュラー番組はTOKYO FM「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。」(月~木曜・後1時)、ABCラジオ「今村翔吾×山崎怜奈の言って聞かせて」(木曜・深夜0時)、CBCラジオ「ザキオカ×スクランブル」(土曜・後4時15分)。

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