歌舞伎俳優の尾上松緑がこのほど、スポーツ報知の単独インタビューに応じ、19歳となり成長が著しい長男の尾上左近について語った。

 左近は昨年、「吉野川」の雛鳥を勤め、今年7~8月の「刀剣乱舞」、今月の「菅原伝授手習鑑」で苅屋姫を好演している。

「『刀剣乱舞』は尾上松也くんが声をかけてくれて、左近に『お前どうだ?』と聞いたら、挑戦したいと。うちは新作に関して腰が重い家なんですけど、挑戦したいと言うなら、やってみればいいじゃないかと。『武者修行に行っておいで』と快く送り出しました。苅屋姫に関しては、片岡孝太郎のお兄さんに稽古していただいたので、僕は一切、口を出しません」

 左近との親子関係では、2023年4月の「連獅子」がターニングポイントになった。

 「僕にとっては子離れのきっかけだった。決めていたんです。歌舞伎座で『連獅子』をやるということは、『成長のトリガー』というか、彼の中で大きくなることだろうと思ったので、今後は楽屋から舞台に至る一挙手一投足に、細かく言わなくても大丈夫だろうと。彼は当時17歳で少年ですけど、昔で言えば元服。いちいち父親が言う時期は終わったなと『連獅子』の千秋楽で思いました」

 以前は楽屋で「お前、何やってんだ!」と、どなることもあったが、「連獅子」をやり遂げてからは一切なくなった。「それは決して見放したとか、彼を諦めたということではなく、ここから彼は、自分の足で自分の人生を歩んでいくんだろうなと思った。いろいろな先輩に教わって舞台に出ているのなら、とやかく私が口を出すことではない。具体的なアドバイスはしますけど、彼の人生は彼に任せるべきだと思っています」

 左近が女形で目覚ましい成長を見せている。

「僕は線の太い役を得意とした祖父の2代目松緑に近い。息子は父の辰之助に近いキャラクターなのかな。だから僕と違うタイプの役者になっても異存はないです。ゆくゆくは3代目辰之助になるのか、5代目松緑になるのかもしれないけど、どんなスパイスが加味されて、どういう役者になるのか。『将来が楽しみ』と言うと親バカみたいだから、まあ面白く見ていますよ」。松緑はそう言って、照れくさそうに笑った。(有野 博幸)

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