巨人の阿部慎之助監督(46)が3日、スポーツ報知のインタビューに応じ、クライマックスシリーズ(CS)への思いを激白した。目指すはリーグ3位からの下克上日本一。
貯金1でリーグ3位。優勝した阪神に独走を許し、15ゲーム差をつけられた。レギュラーシーズンは屈辱の結果に終わったが、CSから日本シリーズ進出、日本一のチャンスがある。
「失うものは何もない。当たって砕けろだよね。そう思ってやれるのが3位のチームだと思うし。去年はリーグ優勝したけど、CSで負けて悔しい思いをした。その思いをタイガースにさせてやる、と思ってみんなでやっていきたい」
DeNAとの第1Sは横浜で最大3試合の2戦先勝制。甲子園での最終Sの切符をかけた超短期決戦だ。
「勝って勢いつけてノリノリでいっちゃおうぜ、みたいな空気はつくってあげたい。あとは、やるのは選手だから。いい意味で開き直ってできるかだよね」
逆境でも動じない。9、10月は13勝9敗1分け。月別最多8度の逆転勝ちで、うち3試合は4点差をひっくり返す劇的展開だった。投手陣の初回失点の多さは課題として残ったが、劣勢でも諦めない反発力が増した。
「先制されても取り返す力がついてきた。そこは後半戦の収穫。点を取られても何とか追いついて。そういう試合ができるようになってきた。
9、10月は23試合中14試合が2ケタ安打で、月間チーム打率2割8分2厘は月別最高。1試合平均4・0点は、月別最高の8月の4・0点と同じで、5~7月に平均2点台と苦しんだ姿はもうない。CSも好調の打線に期待がかかる。
「あとは全員でモチベーションを上げてやるだけ。短期決戦はミスした方が負ける。守りだったら取れるアウトを確実に取っていくかとか、攻撃ならアウト1個あげてもランナーを先の塁に進めるかとか。それが勝ち負けの最大の分岐点になると思っている」
昨年のDeNAとのCS最終Sは6試合で9得点と攻撃陣が沈黙して敗退。スタメン出場した5番打者が計22打数無安打と機能せず、4番・岡本が初回から歩かされるなど、計4つの申告敬遠で打線が分断された。今年は得点圏打率3割5分9厘の岸田らが後ろに控えている。
「岸田も勝負強さをたくさん出してくれた。キーマンは全員だよね。なりふり構わずやっていきたい」
巨人がリーグ2、3位からCSで逆転した例は過去に一度もない。
「可能性はゼロじゃないわけだから。野球は最後の最後まで分からないしね」
満員の本拠地・東京Dでもう一度、野球をやるには日本シリーズに進出するしかない。「#ドームに帰ろう」を実現するためには中山ら若手の躍動も必要だ。それが下克上の力になる。
「若い選手がCSを経験してどう感じるか、どう悔しがって、どう喜べるか。それが大事。いつも以上に『この1打席!』とか『この1球!』って強い気持ちを持ってやってほしいね」
中山は今季、大きく飛躍した選手の一人だ。自己最多の103試合出場、打率2割6分5厘、7本塁打、32打点とキャリアハイ。本職は内野だが、シーズン途中から外野に挑戦し、後半戦は主に「6番・右翼」でスタメンに定着した。それでもあえて評価は辛口だ。
「もちろん頑張ってくれたんだけど、こちらからしたらまだまだ物足りない。
2軍監督時代から中山を指導し、誰よりもバットを振って練習する姿を近くで見てきた。負けん気の強い性格も知っている。さらなる好成績を残せる可能性があると期待しているからこそ、時に厳しい言葉もかけて奮起を促してきた。
「礼都にはまだまだレギュラーじゃないんだよっていう話をして。このくらいの成績なら試合に出られるでしょって思ってほしくなかったから。もっと貪欲さ出していかないとって。振る力はすごくあるし、伸びしろはすごいある」
2年目の泉口はチームMVP級の活躍。遊撃手として攻守でチームの中心に座り、最後まで首位打者争いに加わり打率3割1厘。出塁率もタイトルに惜しくも届かなかったが、3割6分2厘をマークした。
「素晴らしいし、周りからもよく頑張ったねと言われると思う。だけど、これからは、これを毎年続ける難しさが出てくる。その覚悟を持ってもっともっと上を目指してほしいね」
中山や泉口を筆頭に若手がCSのしびれる短期決戦で結果を残せれば、成長への大きな糧になる。「全員でやっていきたい」との言葉通りポストシーズン一戦一戦、一致団結して上を目指す。この日は1軍本隊は休養日で4日の全体練習から再始動する。熱い気持ちを胸に下克上に挑む。