巨人は4日、11日から始まるクライマックスシリーズ(CS)第1ステージ(S)DeNA戦(横浜)へ向け、本拠・東京Dで全体練習を行った。日米通算200勝を達成したばかりの田中将大投手(36)は楽天で4勝、ヤンキースで5勝を挙げている“ポストシーズン男”で短期決戦で重視してきた心構えを明かした。

キーワードは「いつも通り」。最終Sの阪神戦(甲子園)での登板を見据える右腕に大舞台での強さの秘けつを聞くべく、担当の堀内啓太記者が直撃した。

  * * *

 どうしても気になった。日米のPSで結果を残し続けてきた田中将には、経験に裏付けされた特別な準備などがあるのか。CSに向けた1軍練習後の東京D。一体どんな思考で短期決戦に挑んできたのかを聞いた。

 「いつも通りやること」

 返答はシンプルだった。ただ、その後にこう続けた。

 「いつも通りやることが余計に難しくなるんですよ。独特の雰囲気があってCSの緊張感があって、一発勝負の短期決戦はシーズンといろいろ違う。いつも通りのいい精神状態、いいフォームのバランス、いつも通り投げることが難しくなる。その中で『いつも通りできる人』が結局は結果を残せると思ってます」

 楽天時代は09、13年とCSに2度出場して計4登板で3勝1セーブ、防御率0・64。

先発3試合は全て完投勝利で1完封。ヤンキースではメジャー史上初となるPS初登板から7試合連続先発で2失点以下の記録を樹立し、メジャーのPS通算5勝もダルビッシュ有(パドレス)に並ぶ日本人最多。PSの“鬼”として活躍してきた。

 特に田中将の場合は、勝利を義務づけられた名門、厳しいニューヨークのファンの前で計り知れない重圧と闘ってきた。誰もが緊張し、不安に襲われる。レジェンド自身も、その環境下で平常心を保つのは難しいことだと理解してマウンドに上がっていたという。

 「いつもと違う自分っていうのは(分かっている)。でも、そこから逃げたら結局、向き合ってないわけやから、いつも通りいられるわけがないんですよ。だから『オレ、今日やっぱ緊張してるな。じゃあ一個一個やることを整理して、こういうこと、ああいうことをやっていこう』と。そこに目を向けていったら、ちゃんとフォーカスできるようになる。集中できるようになるんですよ」

 シーズン中から短期決戦は「勢いあるもん勝ち」と語ってきた。

巨人は3位からの下克上日本一を目指してCSに臨む。現在、1軍投手陣の平均年齢は27歳前後。若手主体の中で経験豊富な大ベテランがどっしりと構え、背中を見せてくれることはチームにとって好影響でしかない。DeNAとの第1Sは山崎、戸郷、横川が先発を予定。自身は阪神との最終Sに備えてフェニックス・リーグで調整登板をしながらPSの心得、経験などを惜しみなくチームメートに伝えていく。

 「(重圧を)気にしたってしょうがない。勝つために投げているわけだから」

 重要なのは、いつも通りプレーするための準備と勝負に入り込む集中力だと明かした。(巨人投手担当)

 ◆楽天時代 3年目の09年、ソフトバンクとのCS第1S第2戦(Kスタ宮城)でCS初登板し、1失点でプロ初の無四球完投勝利。日本ハムとの第2S第3戦(札幌D)も2失点完投勝利を挙げた。シーズン24連勝した13年はロッテとのCS最終S初戦(Kスタ宮城)で完封。第4戦は9回に抑えで無失点に抑えた。巨人との日本シリーズは第2戦(Kスタ宮城)で勝利も第6戦(同)で4失点160球完投で敗戦。

翌日の第7戦(同)の9回に魂の連投で試合を締め、胴上げ投手となった。

 ◆ヤンキース時代 15年以来2度目の進出となった17年にPS初勝利を含む2勝1敗、防御率0.90とフル回転。19年にはアストロズとのリーグ優勝決定S第1戦で6回1安打無失点でPS4連勝、通算5勝目。PS初登板から7試合連続先発で2失点以下は史上初の快挙だった。

編集部おすすめ