巨人・長野久義外野手(40)が14日、都内の会見で現役引退を表明した。今季は出場17試合で「そろそろかなと思った自分もいました」と決断の理由を告白。

今後は大学院に進学する意向を示した。

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 長野のすごさは今までたくさん見てきたが、数ある名場面をしのぐほど妙に印象に残っているのが“カンニング事件”だ。

 けがでリハビリしていたシーズンのこと。低迷していたチームの切り札として1軍からお呼びがかかり、状態を最終チェックするために首脳陣の御前で実戦形式の打撃に臨むことになった。打てなければ昇格見送りもありえる中、結果は余裕の快音連発。即登録となり、さっそうと戦列に戻っていった。

 仲間のピンチに奮い立ち、まだ万全ではないカラダで…と胸熱ストーリーを勝手にでっち上げていたが、真相を知ってズッコケた。事前にキャッチャーを抱き込み、球種やコースを真後ろからささやいてもらっていたらしい。どうりで、いとも簡単に打つわけだ。というか、大胆にもほどがある。

 まあインチキに違いはないが、ズルいとは思わなかった。むしろ、長野が一流たる理由の一部が見えたような気すらした。

いつでもどこでもガチでは、気力も体力も持たない。トップレベル同士の読み合い、化かし合いの世界は、正攻法だけで生き残れるほど甘くはないはずだし、逆にバカ正直さが役に立つことの方が少ないのでは。

 最後の最後に思い浮かんだシーンがこれで、本当にすみません。でも、そんな賢さやたくましさを、今度は後輩たちにこっそり耳打ちして、ナナメ後ろからアシストしてくれる日を楽しみに待ちたい。…とはいえ、未来のG戦士の皆さま。いつか再びユニホームを着た長野から昇格テストに呼ばれることがあっても、この人の目はそう簡単にはゴマかせないのでご注意を。(元長野番・尾形 圭亮)

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