23日のドラフトでソフトバンクに1位指名された米スタンフォード大・佐々木麟太郎内野手(20)のマネジメント会社「ナイスガイ・パートナーズ」の木下博之氏(49)が27日、都内で取材に応じ、来年7月12、13日に行われるMLBドラフトを待って進路を決断する方針を示した。約40人の報道陣を前に、麟太郎が2年目の来季も同大学でのプレーに集中したい意向を代弁。

ソフトバンク入りか、メジャーか、大学残留か。7月中旬から下旬の2週間程度で決断を下すことになりそうだ。

 サプライズ指名を受けても、麟太郎の決意は変わらない。ドラフトではDeNAと2球団競合の末、ソフトバンクが交渉権を獲得した。マネジメント会社の代表を務める木下氏は「来年のシーズンは間違いなく、スタンフォード大でプレーすることは決めています。その決意が揺らぐことはない」と断言。スポーツ報知既報通り、麟太郎は26年2月から6月まではスタンフォード大でのプレーに集中する意向であると明かした。

 1年目はレギュラーで全52試合に出場し打率2割6分9厘、7本塁打、41打点。MLBでは米大学3年修了か21歳以上でドラフト対象となる。来年4月に21歳を迎える麟太郎は、同7月12、13日のMLBドラフト対象で指名される可能性がある。木下氏は進路決断のメドについて、「メジャーのドラフトを待って(結論を)決めることになると思う」と説明。今後の選択肢は大まかに3つが考えられる。

 《1》ソフトバンク入団 28日にもソフトバンクの城島健司チーフ・ベースボールオフィサー(CBO、49)が岩手・花巻東の監督を務める父・洋氏(50)を訪問して指名あいさつをする予定。城島CBOは11月に米国で本人とも会う予定だが、木下氏は「ルール上、あいさつは受けていいと聞いています。ただし、条件提示を受けることは一切ない。ルールにのっとってやっていく。ごあいさつだけはお受けして、その後、その日が来るまで一切会わない」とした。契約交渉解禁は同大学の全日程終了後で、リーグ戦は5月まであり、勝ち進めば6月下旬まで試合がある。交渉期限は7月31日。米ドラフトで指名がなかった場合やソフトバンクが好条件を提示した場合などに可能性がありそうだ。

 《2》MLB球団に入団 米ドラフトで指名された場合、交渉期限は7月下旬までで、例年通りならNPBより数日早い。〈1〉、〈2〉のいずれかを選んだ場合でも休学して将来的な卒業を目指す。関係者によると、スタンフォード大は「アスリートの学び直し」支援に積極的。退部した場合も在学資格を維持できる制度が整備されている。

日本とは異なり何年大学を離れても除籍されないため、長期的な視野で卒業を目指せる。

 《3》大学残留 同氏は「メジャーは夢としてあるが、それが第一の選択肢になるかは全くわからない。大学に残る選択肢も当然ある。本人は『卒業したい』と言っている」とも話した。平日は朝に筋トレした後に全て英語の授業を受け、練習後、夜に自習。1年次の単位は全て取得し、現在は「会計学」に興味を持っているという。米国の他大学に編入する選択肢もあるとし「最終的には自分(麟太郎)で判断すると思います」と明かした。

 いずれにしても、来年のプレーを見たMLB球団がどんな評価をするかが大きなカギを握る。歴代最多の高校通算140発を誇る大砲は、7月中旬から下旬までの2週間程度で大きな決断を下すことになる。大志を抱き世界屈指の名門に進学した麟太郎の進路に注目が集まる。(高橋 宏磁)

 〇…麟太郎はドラフト当日、米国でインターネット中継をリアルタイム視聴していた。父・洋氏を含め1位は想定外で、競合も予想していなかったという。

事前に8球団が視察。木下氏によると、父は接触があった球団関係者には「指名枠を無駄にさせてしまう可能性がある」と伝えたという。また、ソフトバンクとともに1位指名したDeNAからは事前に何の連絡もなかった。麟太郎は「指名していただいた2球団には感謝していますし、見に来てくださった球団にも感謝しています」と語ったという。

 〇…木下氏は報道陣の取材に応じた理由について、「指名後、情報提供ができていないこと」と「いろんな臆測記事なども散見されること」などと語った。今回、同氏が取材の窓口となったが、6月までは本人も父も進路について語ることはないという。また、ソフトバンクの王貞治球団会長がドラフト終了後、国際電話をかけたことを明かし話題になったが、麟太郎の携帯電話の番号を知っていたわけではなく「麟太郎の隣にいたエージェント」を経由して、電話したという。

 ◆米スポーツ界でプロに在籍後、復学したケース

 ▽バスター・ポージー フロリダ州立大在籍時の2008年、MLBドラフト1巡目でジャイアンツから指名を受けて入団。21年に現役を引退するまで、主に捕手や一塁手として通算1371試合に出場し打率3割2厘をマーク。引退後、大学に復学。

 ▽ステフィン・カリー デビッドソン大在籍時の09年、NBAドラフト1巡目(全体7位)でウォリアーズから指名を受けた。4度のNBAチャンピオン、2度のシーズンMVPなど成功を収めた22年に在学当時の論文を完成させて卒業。

 ◆佐々木 麟太郎(ささき・りんたろう)2005年4月18日、岩手・北上市生まれ。20歳。幼少時から野球を始め、江釣子(えづりこ)中では大谷翔平の父・徹氏が監督を務める金ケ崎シニアに所属し、2年夏に「4番・三塁」で東日本選抜大会優勝。花巻東では1年春から「2番・一塁」でレギュラー。高校通算140本塁打。24年秋、スタンフォード大に進学。184センチ、120キロ。右投左打。妹の秋羽(しゅう)は巨人女子チームに所属。

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